激安スーパーに「特売」で対抗するけども…

 群馬県高崎市にできたEDLP型スーパーのクルベ・第一号店は、ヤオコー至近距離に出店し、人の流れは一気にクルベに向かった。なお、クルベは、2023年からスーパーを展開するベルクが始めた新業態で、品質を維持したまま低価格で食料品などを提供している。

 ただし逆のケースもある。

 オーケーが東大阪市の高井田に進出した際、周辺スーパーは客数減を懸念したが、むしろ増加した。これまで地域密着で歩いて来店する層が多かったが、オーケーが出店したことで、車で買い出しに行くEDLP型スーパーの利用層が加わって、商圏がひろがったのだ。

 こうした競合の中で、EDLP型スーパーに対抗して、価格訴求を続けるのも容易ではない。人件費高騰や人手不足が加わり、従来のように頻繁に特売を打つことが難しくなっているからだ。

 実際、25年10月以降、全国平均の最低賃金(時給)は1055円から1118円へと63円引き上げられる予定だ。制度開始以来、最大の引き上げ幅であり、惣菜売場も人件費負担がさらに重くなる。人手不足も重なり、従来のように何度も特売することは厳しい。

 結果的にEDLPやドラッグストアに近い販売手法となり、差別化が効きにくくなるのだ。

 一方、顧客のひもが非常に厳しいのも事実だ。

 東京・神奈川・千葉では、物価と年収がともに高く、生活コストを収入で吸収できる構造がある。一方、大阪や愛知は物価水準が高いものの、年収との釣り合いには揺らぎがあり、生活者の感覚には微妙な負荷が残る(総務省「小売物価当家調査」と厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」を参照)。

 そのため、多くの地域では「節約」が静かに生活の前提となりつつある。実質賃金が伸び悩み、食品インフレが家計を直撃するなか、節約は多くの生活者にとって避けられない行動となっている。

 では実際、消費者はどのような選択をしているのだろうか?