「毎日を気分良く過ごしたい」「他人に振り回されるのをやめたい」「自己肯定感を高めたい」……そんなあなたにおすすめなのが、日韓累計40万部を突破したベストセラー『人生は「気分」が10割 最高の一日が一生続く106の習慣』(キム・ダスル著、岡崎暢子訳)だ。本記事では、ライターの小川晶子氏に、「他人をコントロールしようとする人の特徴」についてご寄稿いただいた。(企画:ダイヤモンド社書籍編集局)

【いますぐ逃げて】「あなたをコントロールしようとする人」がよく言うセリフ・ワースト1Photo: Adobe Stock

助言をくれる「オカルト少女」

 小学生の頃、クラスメイトにオカルト少女がいた。

 前髪をきっちり眉のあたりで揃え、きれいな黒髪をいつもポニーテールにしているホノカちゃんという子だ。

 ホノカちゃんはあまり笑わない。いつも真剣な表情で、私に助言をくれる。

あなたの親友のこと、コックリさんに聞いたの。大人になれないそうよ

「えっ……どうして……」

「理由はまではわからない。ただ、19歳でこの世からいなくなる。だから、それまでに伝えたいことは伝えたほうがいいわね」

 コックリさんは当時大流行していた占いの一種だ。あいうえお表と「はい」「いいえ」が書かれた紙の上に5円玉などの硬貨を置き、参加者がみんなでその硬貨に指を載せる。コックリさんという神様を呼び出して質問をすると、勝手に硬貨が動き出して答えをくれるというもの。

 ブームだったので私も友だちがやる遊びに何度か参加したことがあるが、いまいちピンと来なかった。しかし、ホノカちゃんとやるとすごい勢いで硬貨が動いて答えが出る。私はホノカちゃんが怖かった。

 ホノカちゃんの顔を見ると、ガチなのである。少しも笑っていない。

「あなたのためを思って」という支配

 そんな彼女は学校で浮いていた。

 友だちがいなかったし、先生からも困った子だと思われていた。
 先生から「ホノカさんのことはあなたが担当してね。他に誰もいないから」と言われたことがある。

 ホノカちゃんはしょっちゅう家に遊びに来て、私に助言を残していく。

あなたのためを思って言うんだけど

 私を特別視して、特別に言ってくれていることはわかる。でも、それは本当なのか? 私は怖くて眠れないことがよくあった。

 いま思うと、私はその頃ホノカちゃんに支配されていたのだ。

 私のためにいろいろ言ってくれるホノカちゃんの言うことを聞き、恐れていた。

 そんな日々が続いていたが、さすがに私の両親が変に思ったようで、ホノカちゃんを家から遠ざけるようになった。

 電話を貸してほしいというホノカちゃんに、電話のコードを長く伸ばして「家の外で使って」と渡しているのを見たこともある。

 そうこうしているうちに、ホノカちゃんは転校していった。

 たぶん彼女もいろいろな事情を抱えていたんだろう。当時の私は、彼女の事情を知ろうとしてあげることができなかった。今頃どうしているだろう? ときどき思い出す。

 ホノカちゃんの助言は頭から消えなかったが、本当にはならなかった。19歳でこの世からいなくなると言われた私の親友は、50歳近くなった今も元気に生きている。

その言葉は本当だろうか?

あなたのためを思って」という言葉は、けっこう危険である。

あなたは特別だ、だから助言をするのだ」という雰囲気を醸し出しながら、こちらを縛ってくる。いつのまにかその言葉に縛られ、コントロールされることにもなりかねない。

 誰かに対して「あなたのためを思って」と言いたくなったときも同じだ。相手を縛るのが本意でないなら、控えたほうがいいかもしれない。

 気分を整える106の習慣が紹介されている本、『人生は「気分」が10割』の中には「『あなたのためを思って』の意味をはき違えない」という項目がある。

 心から思いやる誰かのためにすべきことは、その人を輝かせることじゃない。その人の輝きが消えないように見守ることだ。

 大切に思うばかりに、その人に輝いてほしいと望む。そばで見守っているその人のまぶしい姿が見たくて。大切な人に今よりもっと成功してほしいと願うのはごく自然なことだ。
 しかし、それが単に自分のわがままであるってこともわきまえておかなければならない。さもないと、相手のために応援のつもりが、エスカレートして過干渉となりかねない。
 ――『人生は「気分」が10割 最高の一日が一生続く106の習慣』(p.168)

 著者のキム・ダスル氏は、どこまでが相手を想う気持ちでどこからが自己満足なのかの判断が難しいからこそ、いつでも「この気持ちが、本当に相手のためのものなのかどうか」気を付けたいと言っている。

 そのとおりだと思う。

「あなたのためを思って」という言葉は、言われたときも、言いたくなったときも、ちょっと立ち止まって「本当だろうか」と考えてみるのがよいのではないだろうか。

(本稿は、『人生は「気分」が10割 最高の一日が一生続く106の習慣』の発売を記念したオリジナル記事です)

小川晶子(おがわ・あきこ)
大学卒業後、商社勤務を経てライター、コピーライターとして独立。企業の広告制作に携わる傍ら、多くのビジネス書・自己啓発書等、実用書制作に携わる。自著に『文章上達トレーニング45』(同文館出版)、『オタク偉人伝』(アスコム)、『超こども言いかえ図鑑』(川上徹也氏との共著 Gakken)、『SAPIX流 中学受験で伸びる子の自宅学習法』(サンマーク出版)がある。