【世界史ミステリー】資本主義は“工場”から始まった!? その超意外なルーツとは?
「地図を読み解き、歴史を深読みしよう」
人類の歴史は、交易、外交、戦争などの交流を重ねるうちに紡がれてきました。しかし、その移動や交流を、文字だけでイメージするのは困難です。地図を活用すれば、文字や年表だけでは捉えにくい歴史の背景や構造が鮮明に浮かび上がります。
本連載は、政治、経済、貿易、宗教、戦争など、多岐にわたる人類の営みを、地図や図解を用いて解説するものです。地図で世界史を学び直すことで、経済ニュースや国際情勢の理解が深まり、現代社会を読み解く基礎教養も身につきます。著者は代々木ゼミナールの世界史講師の伊藤敏氏。黒板にフリーハンドで描かれる正確無比な地図に魅了される受験生も多い。近刊『地図で学ぶ 世界史「再入門」』の著者でもある。

【世界史ミステリー】資本主義は“工場”から始まった!? その超意外なルーツとは?Photo: Adobe Stock

資本主義の驚くべきルーツとは?

 16世紀、スペインは大航海時代に新大陸へ到達し、コンキスタドールと呼ばれる冒険家たちによってアステカ帝国やインカ帝国などの先住民国家を征服しました。

 その結果、中南米一帯はスペインの植民地となり、メキシコのサカテカス銀山やボリビアのポトシ銀山などで大量の銀が採掘され、世界中へ流通しました。同時期、日本の石見銀山も世界的な銀供給地となり、17世紀前半には世界の銀の約3分の1を産出していました。

 こうした銀の流通量増加により、ヨーロッパでは貨幣量が増え、物価が100年近く上昇し続ける「価格革命」が起こります。この物価上昇の主因は銀の供給増加ですが、西ヨーロッパでの人口急増により食料などの需要が高まり、生産が追いつかなかったことも一因とされています。

 価格革命の発生は、国際分業をもたらします。まず、中世後期より農奴解放が進んだ西ヨーロッパでは、ヨーマン(解放農奴)が土地を買うなどして地主となり、その土地に工場を構えます。

 この工場は、工場制手工業(マニュファクチュア)といい、機械化が十分でないながらも手作業で分担して製品を作り出すので、職人の手にかかるより生産効率が高いのです。価格革命が発生すると比較的安価な工場製の製品は継続的な利益を生むこともあり、西ヨーロッパでは主に羊毛を用いた毛織物業でマニュファクチュアの設立が進みます。

 これらマニュファクチュアを有する経営者(解放農奴ないし地主)は、利益を元手にさらに事業を拡大(工場の規模を大きくしたり従業員をもっと雇用するなど)するようになり、産業資本主義(あるいは市場経済)の形成を促します。下図(図55)を見てください。

【世界史ミステリー】資本主義は“工場”から始まった!? その超意外なルーツとは?出典:『地図で学ぶ 世界史「再入門」』

 また、マニュファクチュアの経営者は産業資本家と呼ばれ、資本主義の形成が日の目を見るのです。

(本原稿は『地図で学ぶ 世界史「再入門」』を一部抜粋・編集したものです)