【大人の教養】王国と帝国の違いを「1枚の図」にしてみた!
「地図を読み解き、歴史を深読みしよう」
人類の歴史は、交易、外交、戦争などの交流を重ねるうちに紡がれてきました。しかし、その移動や交流を、文字だけでイメージするのは困難です。地図を活用すれば、文字や年表だけでは捉えにくい歴史の背景や構造が鮮明に浮かび上がります。
本連載は、政治、経済、貿易、宗教、戦争など、多岐にわたる人類の営みを、地図や図解を用いて解説するものです。地図で世界史を学び直すことで、経済ニュースや国際情勢の理解が深まり、現代社会を読み解く基礎教養も身につきます。著者は代々木ゼミナールの世界史講師の伊藤敏氏。黒板にフリーハンドで描かれる正確無比な地図に魅了される受験生も多い。近刊『地図で学ぶ 世界史「再入門」』の著者でもある。

【大人の教養】王国と帝国の違いを「1枚の図」にしてみた!Photo: Adobe Stock

王国と帝国、何が違うかサラッと説明できますか?

 オリエントではメソポタミアやエジプトといった大河の周辺域に人口が集中し、次第に人々はムラを築きます。さらに近隣のムラが集合して都市、すなわち都市国家が形成されていきます。

 やがて都市国家同士が争うようになると、広域の都市を支配する領域国家が登場します。領域国家が割拠すると、その中間に位置する地域には商業民族(フェニキア人やアラム人)も繁栄します。最初はまばらだった人間の活動が、徐々に一つにまとまろうとしていることにお気づきでしょうか。

 俯瞰的な視点で見ると、古代や近代といった時代区分には、それぞれの時代を特徴づける大枠があり、これを「システム(世界システム)」といいます。

 では、古代の場合、この次の段階はどうなるでしょう? そう、これら領域国家や商業民族ですら、一つの政治体に統合されていくのです。それが、古代を特徴づけるシステムである、「世界帝国」です(下図参照)。

【大人の教養】王国と帝国の違いを「1枚の図」にしてみた!出典:『地図で学ぶ 世界史「再入門」』

 さて、そもそも「世界帝国」とは何なのでしょうか。これについて語る上で、まずこの問いを考えてみてください。

“「王国」と「帝国」の違いは何か?”

 似たような名前でありながら、意外にその特徴にはかなりの差異があると言えます。

 では正解です。

 まず王国は「(ほぼ)単一民族の国家」です。無論、国王(君主)の存在は不可欠ですが、その国家を構築する民族は、その大多数が同一の言語を扱う民族である、といえます。一方で、帝国は「多民族国家」、すなわち、様々な民族(あるいは言語・文化集団)を支配下に置く広域国家です。下図を見てください。

【大人の教養】王国と帝国の違いを「1枚の図」にしてみた!出典:『地図で学ぶ 世界史「再入門」』

 ここでポイントは、帝国は必ずしも君主(皇帝など)がいるとは限らず、共和政や民主政の政体であっても帝国になりうる、ということです。

(本原稿は『地図で学ぶ 世界史「再入門」』の一部抜粋・編集を行ったものです)