
米国の企業の間で合併や買収などのディールメーキングが活発化している。企業の「離婚」も同様だ。
今年の大型ディールの中には、過去の巨大合併を解消する動きも目立つ。
米メディア大手 ワーナー・ブラザース・ディスカバリー(WBD) は6月、投資家の不満が強まる中で、傘下の事業を2社に分割する計画を発表した。同社は米通信大手 AT&T 傘下のメディア大手ワーナーメディアと米同業ディスカバリーが430億ドル(現在のレートで約6兆4000億円)規模の統合で誕生したが、4年足らずで結婚を解消することになった。先月には米飲料大手キューリグ・ドクター・ペッパーがオランダのコーヒー会社JDEピーツを180億ドルで買収することで合意した。キューリグによると、この動きは2018年に統合した炭酸飲料事業とコーヒー事業を分離する序章となる。
今月2日には、米食品大手クラフト・ハインツが事業を2社に分割する計画を発表した。同社は著名投資家のウォーレン・バフェット氏とプライベートエクイティ(PE)投資会社が10年前に主導した食品大手の統合で誕生した。
関係者らによると、投資家はコングロマリット(複合企業)への関心を失っている。期待されたコスト削減が実現しなかったり、成長の早い事業部門が他の部門に足を引っ張られたりするケースが多いためだという。工業分野ではこの動きが先行し、2024年にはゼネラル・エレクトリック(GE)が3分割され、長年の巨大複合企業体制に終止符が打たれた。
法律事務所A&OシャーマンのM&A(合併・買収)担当パートナー、ロマン・ダンブル氏は、多くの大企業は一定の段階に達すると「コングロマリット・ディスカウント(複合企業の価値が各事業の価値の合計に比べて低い状態)」で取引され始めると指摘する。そして、業界の1社が動き出すと、他社も同様の行動を取る「雪だるま効果」が生まれるという。
ダンブル氏は「事業内容が明確なものに投資したいと投資家は考えている」と語る。
ディールメーキングが今年は再び盛り上がりを見せている。LSEGのデータによると、米国ではM&A件数が3日時点で前年と比べ23%増加している。大型合併が一様に敬遠されているわけでもない。今年最大の案件はこれまでのところ、米鉄道大手の ユニオン・パシフィック による同業大手 ノーフォーク・サザン の715億ドルの買収だ。
こうした動きは、銀行に多額の手数料をもたらしている。