ニューヨーク市のタイムズスクエア周辺のギャラリー付近を人々が歩く。トランプ政権の政策により訪米客が減少し、消費者は支出を控えているニューヨーク市のタイムズスクエア周辺のギャラリー付近を人々が歩く。トランプ政権の政策により訪米客が減少し、消費者は支出を控えている Photo:VIEW press/gettyimages

減速する米国経済
鍵を握る消費と雇用

 連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、8月のジャクソンホールにおける講演で9月にも利下げを行う可能性を示唆した。これまでは関税がもたらすインフレ・リスクへの対処を優先していたが、最近の雇用統計の悪化を受けて景気悪化リスクとのバランスを再考し始めたのだ。

 高関税が経済へダメージを与える経路の一つは、政策の不確実性が高止まりすることによる投資の先送りだ。筆者は、米国の民間投資が第3四半期と第4四半期にマイナス成長になると予測している。

 もう一つの経路はインフレで実質所得が下押しされ、景気の柱である個人消費が減速するものだ。今年第2四半期に2.5%程度であったインフレ率は、年末に3%を超えるとみている。この結果、オックスフォード・エコノミクスの8月最新予測では、米国のGDP成長率が昨年2.8%の後、今年1.7%、来年2.0%に止まる。

 それでも景気後退のリスクが限定的とみているのは、今後、減税などの財政支援、金利低下、政策不確実性の低下が下支えとなるためだ。

 ただ、成長の下振れリスクにも目配りが必要だ。鍵を握るのは、景気の柱である消費と雇用の先行きで、脆弱性として気になるのがトランプ2.0の下で一段と深刻化する経済格差である。