
米中の貿易交渉にほとんど進展が見られない中、中国政府は新たな姿勢を示している。それは、対話は継続するが、圧力には屈しないということだ。
何立峰副首相が率いる中国交渉チームの主要メンバーで、中国商務省の国際貿易交渉代表兼次官の李成鋼氏が最近、米首都ワシントンを訪問した際、この立場が鮮明になった。
事情に詳しい関係者らによると、この訪問は米政府の要請によるものではなかった。李氏は、中国との閣僚級協議に直接関与しているスコット・ベッセント米財務長官やジェミソン・グリア米通商代表部(USTR)代表などの政府高官とは会談しなかった。代わりに財務省や商務省、USTRの次官級当局者と会談し、主に中国の従来からの立場を繰り返し伝えた。
この訪問は中国の習近平国家主席からの新たな指示を示唆している。トランプ政権との関わりには前向きだがほとんど譲歩しないことによって、中国は大国間競争が激化する中で、責任ある当事者の立場を堅持しようとしている。
その結果、微妙な緊張緩和が生まれている。だがそれは、近いうちに貿易合意に至る可能性が低いものだ。
ここ数週間にも、習氏はロシアやインド、北朝鮮、その他の発展途上国の指導者らを盛大に迎え入れ、ドナルド・トランプ米大統領の米国第一主義の外交政策とは対照的な、新たな多国間の世界秩序におけるリーダーとして中国を印象づけようとした。
関係者らによると、李氏は8月末のワシントンでの会談で、米国による中国製品への関税を撤廃し、米国のテック製品の対中輸出規制を緩和するよう求める中国側の要求を繰り返した。だが、実質的な見返りの提案はほとんど行わなかった。
「会談は生産的ではなかった」。李氏の訪問をよく知る関係者の1人はこう述べた。