
企業倒産は高水準が続いている。8月の全国倒産件数は751件と3カ月連続で増加し、累計でも前年を上回る。8月の負債額最大は脱毛サロン「ミュゼプラチナム」を運営していたMPHの260億円で、120万人超の債権者を抱える異例の規模となった。物価高や人手不足の影響を受け、美容業をはじめ小規模事業者の淘汰が加速している。(帝国データバンク 情報統括部 情報編集課長 内藤 修)
債権者数は120万人超
前代未聞のミュゼ破産
企業倒産は依然として高水準が続いている。帝国データバンクが9月8日に発表した2025年8月の企業倒産(全国・全業種)は751件発生し、前年同月(746件)を0.7%上回り、3カ月連続の増加となった。
とはいえ微増にとどまり、足元の倒産増加ペースは前年に比べて緩やかになっている。お盆休みもあって企業の営業日が減り、経済活動がスローダウンする8月は、1年を通じて倒産件数が抑制される月のひとつと言われる。2025年も例外ではなく、今年最多を記録した7月(956件)に比べても、200件を超える大幅な減少となった。
他方で、2025年の累計件数は今なお、前年を上回るペースで推移している。2025年1~8月の合計は6710件を数え、前年同期(6553件)を157件上回った。中期的なトレンドをみても、政府による各種の緊急支援策の効果により歴史的な低水準だったコロナ禍前半を経て、2022年4月(487件)を底に、その後は長引く物価高を背景に増加基調が続いた。
足元では、深刻さを増す物価高や人手不足、ゼロゼロ融資などで膨らんだ過剰債務などの問題に直面し、経営体力が限界に達した小規模事業者の淘汰が相次いだ。
8月の負債総額は1129億3600万円となり、前年(927億5900万円)を4カ月ぶりに上回った。とはいえ、過去の倒産増加局面(2000年代前半やリーマン・ショック前後)の時期に比べると、負債総額は総じて低水準にとどまっているのが現状だろう。