手で顔を覆う女性写真はイメージです Photo:PIXTA

職場で感情をあらわにして涙を流すことは、社会人としてネガティブな行為だと認識されている。しかし現実には「職場で、人前でも泣く人」というのが存在する。泣かせたのが上司だとなれば、イマドキはその上司がセクハラだ、パワハラだと言われかねない。特に1対1のやりとりで部下が泣き出した場合、それは上司のハラスメントに当たるのだろうか?(カスタマーズ・ファースト株式会社代表取締役・代表講師、産業カウンセラー 片桐あい)

1on1で部下が泣き出したら、それは上司のハラスメント?

 上司と部下が1対1で対話を行う「1on1ミーティング」(以下、1on1)は、近年、多くの企業で導入されています。ある日、男性上司は1on1で個別にフィードバックをしようと思っていた女性社員を会議室に呼びました。

 彼女は会議室に入り、席に座ると同時に机にハンカチを置き、うつむいています。「厳しいことを言ったら、私、泣きますよ」という無言の意思表示。彼女の言い分としては、日頃のコミュニケーションや関係性がうまくいっていなかったことや、高すぎる目標、ゴールに納得していないといったことがあり、その抵抗の気持ちもあって、1on1に臨んだようです。

 過去に、彼女が職場で泣き出したときのことを思い出して、上司は萎縮してしまいました。1対1の面談で部下を泣かせたとなれば、セクハラ、パワハラと言われかねません。本来の1on1の目的を達成し、ハラスメントと言われないためには、どうしたらよいでしょうか?

部下の涙を恐れる管理職も多いが……

 このようなケースで相手が泣いてしまった場合には、「泣かせてしまった(相手が泣いた)=ハラスメント」ではありません。落ち着いて対応しましょう。

 相手の感情に寄り添いつつ、面談の目的を明確にすることが大事です。「感情は尊重しますが、今日は○○について話したいと思っています」と伝えましょう。言動を記録したほうがいいこともあります。具体的な面談の進め方については後述します。

 また、目の前の相手の反応に振り回されないことも大切です。泣かれることに罪悪感を抱きすぎると、部下への指導ができなくなり、組織の健全性が損なわれます。