
大人の毎日は「選択」の連続です。ピンチをチャンスに変えるには、どうすればいいのか。高い評価や人望や信頼をたくさん得られるのは、どっちの選択肢か。微妙な状況への立ち向かい方を通じて、より大きな幸せをつかめる「トク」な道を探りましょう。(コラムニスト 石原壮一郎)
乗るべきか、乗らざるべきか
残業を終えて終電で自宅のマンションに帰った。
閉まりかけたエレベーターにあわてて乗ろうとしたら、既に先に乗っていた女性が「お先にどうぞ」と言って、降りようとした。
警戒する気持ちはわかるが、自分は怪しい人間ではないので、正直、ちょっとカチンと来てしまった。「いっしょに乗りましょう」と言うか、素直に別々に乗るべきか。さて、どうする?
選択のポイント
実際に物騒な事件も起きているだけに、女性が深夜のエレベータに見知らぬ男性と二人っきりで乗ることに警戒心を抱くのは無理もありません。「お先にどうぞ」と言われたからといって「犯罪者扱いするのか!」とムッとするのは、想像力が足りなさ過ぎます。
「自分は怪しい人間ではありませんから、安心してください」と言ったら、女性はなおさら不安になるでしょう。相手が男性と乗ることを避けたいと思っている以上、いっしょに乗ることを提案するのはあまりにも無神経です。
エレベーターには別々に乗るとして、大切なのは「お先にどうぞ」と言われたときの態度。仮にカチンと来たとしても、そんな気配を顔に出すのは大人としてあり得ません。「えっ、いいんですか」と言って先に乗り込んでしまうのも、まだまだ未熟です。
ここは静かな口調で「あっ、すみません。お先にどうぞ」と、もともと乗っていた女性に先を譲りたいところ。
「あっ、郵便受けを見るのを忘れました」とか何とか言って、エレベーターの前を離れてしまう手もあります。せいいっぱい「紳士」になりきることで、いいことをした気分や、何なら人助けをしたような気分が味わえるでしょう。