世界に一つだけのジュエリーを提供　スムーズな事業承継に向けた備えも推進

職人不足が加速する中
早期からCADを導入

CADでデザイン作業をする姉の伊藤舞氏（上）。ジュエリーの技術者であり、将来の経営を担う妹の吉田明里氏

　さらに業界全体の課題として、本格的なジュエリーを手がけられる職人不足から、看板を下ろす同業他社が増えていることが挙げられる。藤居氏は、早期から事業承継の在り方を念頭に、「2人の娘の意志を確認しつつ、約10年前から技術指導などを行いながら、備えを進めてきました」と明かす。

　ジュエリー専門学校を卒業し、制作を手がける妹の吉田明里（あかり）氏が店舗経営を担当、姉の伊藤舞氏はCADのデザイン作業と接客を担う。

　時間をかけて職人を育てることが難しい時代になる中、早期から導入したCADを活用し仕事の効率化を図ることで、子育て中の姉妹2人が働きやすい環境整備にも注力している。

　姉の伊藤氏は「対面の接客はもちろん、メールやラインでのやりとりもCADで制作したデザインを共有しつつ、小まめなレスポンスを心がけています」と、少人数の会社だからこそ丁寧な接客姿勢を大事にしていきたいという。

　事業承継の時期は未定だが、藤居氏自身は「もういつでも任せられる段階に来ました」と姉妹の成長を実感し、付かず離れずの距離感で2人をサポート。「若い世代のお客さまが増えていく中、自分たちの強みを生かした、事業運営をしていってほしい」と語る。

　家族経営の温かさを大切にしつつ、時代の変化に果敢に挑む同社。姉妹2人による新たなチャレンジにも期待したい。

（「しんきん経営情報」2025年10月号掲載、協力／長浜信用金庫）