
永遠に続く幸せを願う思いを無限大(∞)の形に託した「無限大リング」。2人の名前のイニシャルをデザイン化し、かつ二つのリングを重ね合わせるとハートの形が浮かび上がるような仕掛けが施された「イニシャルリング」――。
既製品が主流のジュエリー業界において、オーダーメイドの結婚指輪、婚約指輪を中心に世界で一つだけのジュエリー作りにこだわり続ける会社がある。滋賀県米原市のアトリエ春だ。(取材・文/大沢玲子)

同社は1993年に創業。「お客さまが欲しいものを作りたい。ご要望を聞きながら目の前でデザイン画を描き、喜んでいただける商品を手がけたい。そんな思いから当時珍しかったフルオーダーを中心とする工房を開きました」。同社代表取締役の藤居克爾氏はそう振り返る。
こだわりは大手メーカーが手がけない、大量生産が難しい商品を実現すること。先に挙げた無限大リングは、正面から見ると優しいカーブを美しく描き、手のひら側は薬指の付け根に沿うよう計算されたラインになっている。左右対称の8の字形になっているため、当時の技術では大量生産が不可能な商品として業界で話題となった。
「3本セットリング」は、婚約指輪と結婚指輪を重ね着けしたいという女性の願いに応え、さらに男性用マリッジリングを重ねて置いた際にハートのモチーフが浮かび上がるなど、凝った趣向だ。
自分で結婚指輪を作る
体験型コースも新設

フルオーダーは敷居が高いという人には、セミオーダー式の「セルフィニティコレクション」や、素材の変更や宝石の追加などのアレンジが可能なオリジナルブランド「SHUN Original」を展開。多様な品ぞろえにより、予算に応じた、自分好みのジュエリーを手にできる。「地元情報誌の他、早期からホームページを開設し、現在はSNSでの発信も小まめに行っています」と藤居氏。何より口コミ効果で全国から注文が舞い込む。
一方で、婚姻件数の減少、購買行動や価値観の変化などの課題を踏まえ、さまざまな変革にも挑んでいる。その一つとして新設したのが、結婚指輪を自分で作りたいというニーズの高まりを受けた体験型コースだ。これまでも「セルフメイド」のプランはあったが、若い世代に向け、所用時間と価格を抑えつつ、「当社らしいクオリティーを担保したコースとなっています」(藤居氏)と言う。