Photo by Masato Kato
7月に高値を付けてから、日経平均株価は一進一退が続いているが、資産数百億円を築いた片山晃氏はどうみているのか。片山氏は引き続き「日本株に強気」とみているが、その根拠は何か。新連載『カリスマ投資家の資産形成術』の第1回では、2026年前半の半導体銘柄の急騰を読み切った片山氏が中長期で有望とみているセクター、初心者が取るべき王道の戦略や近づいてはいけない銘柄を解説。半導体バブル後の相場を勝ち抜く秘訣に加えて、具体的な注目企業名まで告白したロングインタビューをお届けする。(ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)
AI投資の恩恵を受ける日本株
「中長期で強気」の見方は変わらない
――3月に公開したインタビューでは「『日本株に何十年に1回の黄金期』が今来ていると私にはみえます」と発言されていました。当時の日経平均株価は5万4000円前後ですから、読み通りの展開になっています。
当たった部分と、そうでない部分がありました。もう少し何とかできたのではないかというのが本音です。
ただ、昨年末からひたすら半導体に「全張り」したことはうまくいきました。半導体に対する強気と、日本株が特に再評価されるであろうポジションにいるという二つの大局観をポートフォリオに表現して成果が出せたので、それはすごく良かったと思いますね。
もっとも、7月にかけては少し株価が先取りして盛り上がり過ぎました。政府の財政赤字への対応についても、市場との対話を避けて、もっと言えばマーケットを無視するようなところは想定外でした。
米国が熱心に為替に言及していますが、普通に考えると内政干渉ですし、異例のアクションです。これは日本発の債務危機やキャリートレードの急激な巻き戻しによるショック的な下落を恐れているからですよね。
ある程度までの積極財政は株にもプラスだと思いますが、やり過ぎると株、為替、債券が全部下がるトリプル安にもなりかねません。介入などもあり、いったん落ち着きを取り戻していますが、政府の姿勢は変わっていないように見えます。米国の金利も上昇しています。特に海外勢については、日本株に対して長い時間軸で大きなポジションを取ってくることが以前よりは難しくなっている。
――日本株に弱気になりつつある?以前の取材では「数年以内に日経平均株価は10万円に到達する」と分析されていました。
いや、そこの見方は変わらないです。もちろん。日本株に対して中長期で強気でみています。足元も指数の水準が高いということはないと思います。
そもそも株が長期的に上がっていく原動力が何かというと、EPS(1株当たり利益)成長と、その何割かを株主に還元するという積み重ねです。
日本企業のEPSは着実に増加しています。インフレが定着する中、日本企業の経営改善は進んでいますし、時間がたてばたつほど、株主還元による底上げもプラスされる。毎年2%から3%ぐらいの資金が入ってくるわけですから。
新NISAができてから2年半以上たちましたけれども、口座の開設数は日本の人口の半数に達していません。都市部で3割ぐらい、地方はそれ以下なので拡大の余地もまだまだ残っている。
懸念材料はいろいろあるわけですが、それでも1年後、3年後に今より下ということはなかなか考えにくいと思います。少なくとも、ここが天井で長期的に下がっていくというイメージではありません。ただし、債務危機などのテールリスクが気になるのであれば、資金の半分はオルカンやS&P500に連動するETF(上場投資信託)や投資信託にした方がいいと思います。
――前回の取材では「AI投資の中心地に日本が位置している」という趣旨の発言もありました。AI投資、AI相場がけん引して、日本株のアップサイドは引き続き大きいということでしょうか。
かたやま・あきら/1982年生まれ。2005年に65万円で株式投資を始め、17年には資産140億円に到達。その後はヘッジファンド運営、事業投資、スタートアップ投資に活動の幅を拡大。近年は自己資金の運用に加えてディーリング事業を立ち上げ、後進の育成も積極的に行っている。現在の総資産は数百億円。 Photo by M.K.
足元、日経平均が停滞しているのは、政府の債務問題に加えて、AI関連の資金調達や借り入れが劇的に増大していることが影響しています。米国ではアルファベットなどビッグテックが相次いで資金調達をしており、日本だとソフトバンクグループが総額1兆円の個人向け社債を発行する。債券市場にお金が吸い上げられているわけです。
一方、当然ですけれども大型の起債は需要があるから行われているわけです。そのお金は誰かの売り上げになり、営業利益やEPSを押し上げて、マーケットのPER(株価収益率)は低下する。どちらかというと、金利が上がっているうちは健全だと考えています。
逆に金利が急に下がり始めた方が怖いですね。景気悪化を織り込み始めたということですから。
今が一番きつい時だと思うんですよ。売上高が立たないけれど、ものすごいAIの需要という部分にはみんなが確信を持っている。
ビッグテックの場合、借金してでもCAPEX(資本的支出、設備投資)をやっているので、フリーキャッシュフローが一番悪くなる時期です。でも、これから時間が経過して、設備投資負担よりも売上高が上回ってくるようなストーリーが実現するならば、これまで足を引っ張っていた彼らの劇的な業績成長が起こる。
そうなると徐々に債券市場へのプレッシャーも和らいでくるはずです。逆に言うと、そうならなかったらAIがバブルだったということなので、まずいんですけれど。
ただ、今のところ、おそらくそうではないということが、半導体やハイパースケーラーのマネジメントから語られています。 米オープンAIの最新モデル「GPT-6 Astra」の需要もそれを裏付けていますし、何回聞いても、米NVIDIAやビッグテックの首脳陣は「半導体があまりにも足りない」「この生産量ではダメだ」と言うわけです。
イーロン・マスクもそう言っています。彼らが一致団結してうそをついているとは到底思えないわけですよ。
最先端の顧客の投資計画など全てのデータを持っていて、最高の頭脳を持った人たちがそう言っているということには、一定の裏付けがあるのではないか。実際、私もAIを使用していますが、「なんかそうっぽいよな」ということを感じさせる現実の推移が後からついてきていると感じています。過度に悲観せずに、ポジティブな面も冷静に見るという態度でいいのかなと思っています。
日本企業の場合、データセンター向けのAIだけでなく、フィジカルAIでも発注を受ける立場にいる。高いマージンで販売していくというポジションにあるわけです。依然として恩恵を受ける側であり、大きな流れの中で日本に実需の投資が流れ込んでくる。
ただ、注意したいのは過去3年の日本株の上昇というのは、ある意味でボーナス期間だったということ。キオクシアホールディングス(HD)を含め、日本株の劇的な上昇はいったん終了しました。
半導体関連のバブル的な上昇やアクティビスト銘柄がガンガン上がることは忘れた方がいいでしょう。7月までの上昇相場の後半においては、半導体関連は二流の銘柄の方が大きく上がりました。そういったバブル的に値上がりした銘柄の中には、二度と2026年前半の高値を取り返さない銘柄もあるかもしれません。
また、注目セクターの入れ替わりが早いことも特徴です。2月の米アンソロピックショックでソフトウエアの株が軒並み2割程度、銘柄によっては半値まで下がりましたが、6月ごろに底入れして以降、多くの銘柄が元の株価まで戻しています。
日本株、米国株に限らず、指数があまり動いていなくても、個別で見るとボラティリティが高い。どこに焦点を当てるかで、良くも見えるし悪くも見える。そういった意味では、難しい一年にはなると思います。
――ほんの数年前であれば、三菱重工業や日立製作所、アドバンテスト、メガバンク、など大型株にも株価数倍のチャンスがありました。
そういう意味では、全部キャッチアップが終わって、フェアバリューになっていますよね。インフレがある世界になって、劇的な水準訂正が起きたと思います。銀行株もめちゃくちゃ上がりました。東京証券取引所の改革要請で、ダメだったバリュー株も大きく上がりました。ありとあらゆる銘柄が大幅に水準訂正されたのが23年からの4年間です。
とはいえ、半導体関連の一部の銘柄は別ですけれども、基本的にはバブルではないですよ。バブルだったら、行き過ぎた後に大きく下がるけれども、下がらないですから。 ただ、ここまでの大型株の爆発的なリターンは再現性がないと思います。
――片山さんの26年の投資成績はどうでしょうか。もし可能であれば、資産額を教えていただけますか。
うーん、事情がありまして数百億円でお願いします。時期が来ましたら、最新の資産額に変更します。ただ、冒頭のように半導体株の上昇には乗れているので、察していただけると……。
――日経平均が7月に天井を付けて以降、物色の中心が半導体やハイテク中心の日経平均型からTOPIX(東証株価指数)型に変化しているという話があります。具体的に注目しているセクター、銘柄群について片山さんの現在のポートフォリオと絡めて教えてください。
中核となるポジションは1年後、3年後の業績を見据えて、高いアップサイドがある銘柄を保有しています。 大型、小型といった分類ではなく、フラットに見て、とてつもないポテンシャルを秘めていると思える銘柄を、完全に個社要因で買っています。
日本株に「中長期で強気」な片山氏だが、今回の相場をどう読み、どんな視点で銘柄を選んでいるのか。次ページでは、片山氏が中長期投資で大きく勝つために必要だと指摘する二つの視点を紹介しながら、注目する業界、さらには企業についても具体名を挙げて解説。キオクシアHDなど注目株との向き合い方や、初心者が取るべき戦略、避けるべき行動についても触れたロングインタビューをお届けする。







