
朝の人気情報番組「ZIP!」で、企画制作を支援するAIエージェントの試験導入が始まった。「制作者の思いが大事」と語る番組の総合演出・八重沢亮さんはなぜ、その対極にあるかのように思えるAIの活用を決めたのか。AIが作った企画は、当初「魂が乗らない」というテレビにとって致命的な壁にぶつかった。暗雲立ち込めるプロジェクトを打開した、八重沢さんの意外な一言とは。(ノンフィクションライター 酒井真弓)
日テレ「ZIP!」に、企画作りを支援するAIエージェントを試験導入
「僕、『数字持ってるんで』っていうのが好きじゃないんです」
そう語るのは、朝の情報番組「ZIP!」の総合演出を務める八重沢亮さんだ。“数字を持っている”~業界では、過去に視聴率を取ったコンテンツをそう呼ぶ。
「皆さん自身が面白いと思っていなければ、いい番組は作れない。過去の成功から学ぶのは大事。でも、自分の着眼点や伝えたい思いはもっと大事にしてほしい」
「ZIP!」の総合演出に就任したとき、八重沢さんは400人のスタッフを前に、そう伝えた。重視するのは、ディレクター自身が「これが面白い!」と心から思えているかどうか。その熱量に自分も共感してGOを出したならば、たとえ視聴率が振るわず責任をとることになっても諦めがつく。それが八重沢さんの信念だ。
その「ZIP!」に今、企画作りを支援するAIエージェントが試験導入されている。制作現場は職人芸が織りなす聖域のように思える。しかもAIは一般に、過去実績から危なげない企画を生成するのが得意だ。なぜ八重沢さんはAIエージェントの活用を決めたのか。
