
酒井真弓
ダイハツ、不正問題の再発を防ぐ「認証試験自動化システム」の中身とは?“ミニカーレース王者”が難題に挑んだワケ
自動車メーカーのダイハツが行っている「地獄のAI研修」をご存じだろうか。工場の製造現場で働く社員たちが2カ月でPythonを習得、自力でシステムやアプリを作れるようになるというものだ。2カ月間本業を休んで研修だけに打ち込み、自分の職場の業務課題を設定し、実際にそれを解決できるようにするプログラムなので、普通の社内研修とは本気度が違う。そしてダイハツといえば、2023年に発覚した認証不正問題が記憶に新しい。認証試験の不正を防ぐために作業を自動化・高速化するシステムも、この研修に参加した現場社員が自力で作り上げたという。

東京都が「脱・IT外注依存」に舵を切ったワケ、エンジニアが“2つの災害現場”で痛感したこと
東京都庁や都内62区市町村のDX最前線を推進する「GovTech(ガブテック)東京」が、行政の現場におけるテクノロジーについて語るカンファレンスを開催した。メインの話題は「行政のデジタルサービスを、内製で開発することについて」だ。なぜ外注任せにせず、ソフトを内製開発しないといけないのか。外注の弊害は4つあるという。また、豊洲市場など、実際に東京都で内製開発し、利用されているサービスの例を具体的に3つ紹介した。

都庁や都内62区市町村のDXを推進する「GovTech(ガブテック)東京」が、初のテクノロジーカンファレンスを開催した。宮坂学東京都副知事が登壇し、行政DXの5年間を振り返る中で語ったのが、2025年2月にリリースした「東京都公式アプリ」の開発方針である。従来の行政システム開発とは一線を画す「内製開発」に転換し、エンジニア採用も強化していくという。その目的とは何か。

「プログラミングなんてできない」と思っていた社員が、2カ月後にはAIシステムを自作。ダイハツ工業の「地獄のAI研修」が製造現場を変えている。工場の製造現場で働く社員たちが一からプログラミングを学んで習得し、自らAIによるカイゼン活動を実践。業務を最もよく知る当事者が開発する効果は絶大だ。HENNGE主催のイベント「情シスMeetup!関西 2025」では、この施策をリードするダイハツ工業 DX推進室の太古無限さんが参加者の質問に答えた。聞き手は筆者。

「日本は遅れている。MicrosoftやGoogleは、少人数チームでアジャイルに開発している」――2017年、そんな若手の一言で始まったニコンの少数精鋭による社内AIサービス開発。2023年には国内トップクラスのスピードで生成AIを導入し、今では全社で34万時間、1人当たり週3.5時間の削減を果たしている。成功の理由は、どうやら3つあるらしい。

世界197カ国に9500以上のホテルを展開し、2億2000万人以上の会員を抱えるマリオットインターナショナル。この巨大組織はどのようにして目標収益の6倍を達成したのか?マリオット・インターナショナル VP 兼 マーケティング オーケストレーション担当グローバルヘッドのヒラリー・クック氏が明かしたのは、最新技術の活用というよりむしろ、組織内に潜むムダと非効率を徹底排除した地道な改善の道のりだった。3月18日~20日にラスベガスで開催された「Adobe Summit 2025」での講演を元に、クック氏の取り組みを紹介する。

富士通が2026年度から新卒一括採用を廃止すると発表した。決断の背景には、日本型雇用を根本から問い直す全社戦略がある。1993年の成果主義導入の“失敗”から30年、富士通はジョブ型人材マネジメントへの完全移行で、何を成し遂げようとしているのか。

2024年世界デジタル競争力ランキングで、日本は67カ国中31位だった。しかし、デジタル人材の知識分野では過去最低の53位、さらにその人材の「国際経験」と「デジタル・技術スキル」は最下位の67位という結果になっている。日本企業のDXは少しずつ進展しているが、それを担う人材の育成が追いついていないことが、国際比較で浮き彫りとなった形だ。日本の企業がDXを進めるためにはどんな人材が必要で、どのように育成すればいいのか。さまざまな企業のDX事例を取材してきた筆者が解説する。

「デジタル化された行政手続きに満足している」――2022年12月の調査でこう答えた東京都民は、わずか26%。一方で、ニューヨークやロンドン、パリ、シンガポール、ソウルでは、満足の割合が66%に達する。40ポイントもの差は、一体なぜ生まれているのか。都庁や都内62区市町村のDXを推進する「GovTech東京」に、行政サービスの使いにくさ解消に向けた取り組みと成果を聞いた。

「トイレの調子が悪いんです」。そんな顧客の問い合わせから、困りごとを解決した上で、リフォームを提案、販売につなげる~LIXILのお客さま相談センターで、新たな挑戦が始まっている。生成AIを使うことで、リフォーム提案の成功率は2倍以上に。顧客満足度も約20ポイント上昇した。手がけたのは、中国ファーウェイからやってきた凄腕の女性データサイエンティストだ。挫折の末に彼女が見いだした、成功の要因とは何だったのか?

グローバルで大規模プラント建設を手掛ける東洋エンジニアリング。2017年のDX開始当初は社員の関心が薄く、説明会を開いたり、部署を回って改善を促したりと草の根的な活動が続いた。しかしこの活動は無駄ではなく、「DX=生き残り戦略」として経営陣に浸透。2019年にはDXを最優先経営課題として「DXoT(Digital Transformation of TOYO)推進部」を立ち上げ、ユニークな取り組みで成果を上げている。原動力となったのは、庶務や秘書として業務を支える一般職社員を中心とした「デジタルファーストチーム」だった。

グローバルで大規模プラント建設を手掛ける東洋エンジニアリング。2019年にDXを推進する部門を立ち上げ、「2025年度までに生産性6倍」というビジョンを打ち立てた。しかし、建設業界には特有の保守性や複雑さがあり、生産性はなかなか上がらない。さらには、変革が進むほどDX部門の負荷が増大する。課題を解決するために行った2つの施策、そしてその先にあるものとは?

ネットの広告では、ユーザーの属性や行動履歴を元にした広告を出すのが主流になっている。しかし精度が向上するにつれて「行動が監視されているようで気持ち悪い」などとネガティブな反応も増えている。日本テレビが、動画配信サービス「TVer」などで配信している新しい広告は、視聴中のコンテンツに合わせて関連性の高い広告を配信する、というもの。例えばドラマの乾杯シーンの後にビールのCMを流す、といった仕掛けだ。視聴者のデータを使わないからプライバシーの懸念がなく、視聴体験を損なわず効果的な広告を実現する。この技術の裏ではGoogleの生成AI「Gemini」が動いているのだが、開発は容易ではなかった。

日々の食事を作る人にとって、大きな悩みの種が「献立を考える」。味の素が開発したサービス「未来献立」は、栄養士の知識やノウハウを教え込んだAIが、人間の代わりに無料で献立を考えてくれるというサービスだ。外食が続いた日の翌日に「つじつまを合わせる」献立なども提案してくれる。味の素には膨大なレシピデータベースがあり、栄養士もたくさんいる。簡単にサービス提供できるかと思いきや、開発は泥臭い作業の連続で、AIに「おいしいとは何か」を教え込ませる工夫と苦労が詰まっていた。

連結売上高約2兆円、グローバルで約8万人を擁するリコーグループ。2020年、同社は複写機需要の減少を背景に、OAメーカーからデジタルサービスの会社へ変革を宣言した。会社が変わるために、核となったのは人事戦略だった。2022年には「リコー式ジョブ型人事制度」を導入。他にも自律型人材の育成、リスキリングなどを推進している。年功序列から脱却して若手管理職を登用するという目的は、2年間でどこまで達成できたのか。

サイバー攻撃対策で金融機関250社超が結集、セキュリティ演習の「超実践的な中身」とは
サイバー攻撃というと遠い世界の話と思うかもしれないが、日本でもサイバー攻撃は増えており、おそらく読者のみなさんが思うよりもたくさんの企業が対応に追われている。8月27日、金融機関向けの大規模サイバーセキュリティ演習「FIRE2024」が開催され、国内250以上の金融機関が参加した。悪意あるサイバー攻撃から顧客を守るため、金融機関は一体何をしているのか。また、競合する金融機関同士が協力して演習や勉強会を行うのはなぜなのか。主催するグループのメンバーと、参加者に取材した。

2012年の創業以来、3度の倒産危機、夫婦で月収9万円という苦境を乗り越えた起業家の瀬川直寛さん。自身がECサイトの在庫管理に七転八倒した経験から、在庫を利益に変える分析クラウドサービス「FULL KAITEN」を生み出した。諦めを知らない起業家の「鋼のメンタル」の正体とは。

断トツの営業成績で「破格の高収入」→起業して「月収9万円生活」に転落した男が見つけた“人生の答え”とは
2012年の創業以来、3度の倒産危機、夫婦で月収9万円という苦境を乗り越えた起業家の瀬川直寛さん。自身がECサイトの在庫管理に七転八倒した経験から、在庫を利益に変える分析クラウドサービス「FULL KAITEN」を生み出した。諦めを知らない起業家の「鋼のメンタル」の正体とは。

「定年後のキャリアどうする?」60歳で新規事業、50歳以降の研修~ある大手スポーツクラブのチャレンジ
2024年、人口の多い団塊ジュニア世代は49~53歳になった。今後10年、毎年大勢の定年退職者が出る企業は少なくないはずだ。再雇用などで定年後も働き続ける人が増えているとはいえ、60歳以降どう働くのか、キャリアデザインに悩む50代は多い。60歳、70歳になったときに、みんな明るくいきいき働いているのだろうか?失われた30年とともに育ち、年金だけでは厳しいと聞かされて生きてきた世代の筆者にはどうしても良くなるイメージが湧かず、ある人物をたずねた。スポーツクラブの大手ルネサンスで、60歳直前に新規事業を立ち上げたという菱谷悟さんだ。

2023年4月、千葉銀行は新たなDX戦略「ちばぎんDX3.0」をスタートした。「面白い銀行」「千葉銀行“で”いいよね」を目指し、アプリの利用者増で振込の取引量が飛躍的に増えたり、独自の人材育成を行ったりと目に見える成果を上げている。同行は2021年からDXに取り組んでいるが、最初の2年は「顧客体験の創造って結局何なんだ?」「千葉銀行のファンになるってどういうこと?」という問いに答えが出ず、暗中模索だったという。頭取や仲間とともに「これで誰が幸せになるの?」とひたすら問い続けた2年間を経て、ブレイクスルーは「銀行に対してニーズなんてあるか? ないわ」と気付いたことだった。
