
異次元金融緩和の後始末
保有ETF、年間3300億円ずつ売却
日本銀行は、9月18、19日の金融政策決定会合で保有する上場投資信託(ETF)について、年間3300億円程度(簿価)ずつ市場で売却すると決めた。
デフレ脱却で黒田東彦前総裁時代が2013年4月から始めた異次元緩和の一環で、10年から始まっていたETFの買い入れは大幅に増額され、13年は年間1兆円、さらに1.5兆円、3兆円、16年には6兆円と拡大された。コロナショックの際は上限を12兆円まで引き上げられた。
植田和男総裁は24年3月、17年ぶりに政策金利を引き上げ、金融政策の正常化に踏み出すと同時に、ETFの新規購入を停止した。
市場では売却開始は既定路線となっていたものの、残高は簿価で37兆円余りに上る。売却を始めれば、株式市場を大混乱させかねず、手つかずになっていた。
日銀では、過去に金融システム安定化や持ち合い解消を名目に銀行から買った株式の売却を今年7月に終えて、市場での株価に影響を与えないで売る知見が蓄積されたという。
ETFの年間売却額は、銀行株を売った際の、市場全体の売買代金に占める売却額の割合(0.05%程度)と同じにしたと説明している。
中央銀行がETFを保有するのはもともと異例なことであり、それが正常に向かうのは適切なことだ。
植田総裁は会見で、金融緩和時に日銀がETFの購入を再開する可能性は「視野に入れていない」と否定したが、売却完了までに「100年以上かかる」と語った。
市場の混乱を避ける思惑からだろうが、しかし売却完了に100年もの期間がかかるという理由付けは説得力に乏しい。