
米電気自動車(EV)大手テスラが前例のない販売不振に陥る中、販売経験がほとんどないIT(情報技術)担当幹部が立て直しを託され、顧客体験のさらなる自動化を推進している。
ラジ・ジェガナサン氏はテスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が所有するXでフォロワーを獲得。ジェガナサン氏はアカウント上で一般顧客やインフルエンサーなどからの苦情に対し、個人的な対応を行っている。
四半期末が近づき、EVの連邦税額控除が9月末に終了することを踏まえ、ジェガナサン氏は先週、「7500ドル(約110万円)の控除が消える前にテスラを注文しよう。時間が迫っている!」と投稿。昔ながらの自動車販売業者のような緊迫感を醸し出した。
顧客サービスと販売は、比較的無名の技術幹部であるジェガナサン氏にとって新しい役割となる。同氏は1月に技術部門のトップに昇進して以来、着実に広範な職務を担うようになった。背景には、テスラ社内の再編や、広く名前が知られた複数の幹部の退任がある。6月以降、最上位の販売幹部2人と上級サービス幹部1人が退社している。
事情に詳しい複数の関係者によれば、ジェガナサン氏は現在、ITと人工知能(AI)関連のインフラに加え、顧客サービスと北米の販売を監督。この変化は、同氏に対するマスク氏からの信頼を示している。またテスラがEV販売からロボティクスやAI製品の販売へと事業を移行する中で、今後技術が中心的な役割を果たしていくことを示唆している。
テスラの販売・サービス部門は、急成長が続いた10年を経て昨年から圧力にさらされている。既存ブランドや新興企業は新たなEVモデルを市場に投入。これにより米国でのテスラのEV市場シェアは50%未満に低下した。