
テスラ株が急落――わずか3カ月で株価は半減し、投資家たちに動揺が広がりました。テスラを取り巻く環境は厳しさを増しています。世界的な脱炭素政策の迷走、中国市場の停滞、アメリカのインフレ再燃とトランプ関税の影響……EV市場を牽引してきたテスラに逆風が吹き荒れています。それでも、テスラに悲観になるはまだ早いと言えます。カギを握るのは、トランプ大統領との「特別な関係」です。テスラの未来を左右する新たなビジネスと、それを支える驚きの“政治的特権”とは。(百年コンサルティングチーフエコノミスト 鈴木貴博)
テスラのEV事業、
価値はトヨタ以下に
マグニフィセントセブンの一角であるテスラ株が急落しています。それまで、昨年後半は株価が急騰していました。CEOのイーロン・マスク氏がトランプ大統領の側近になったことから、昨年秋の大統領選挙後から株価は上昇して12月には最高値の479ドル超を記録しました。
ところがそこからわずか3カ月で株価は下がり続け、直近では248ドル(3月12日時点)まで下落しています。昨年12月と比較すればテスラの企業価値はこの3か月で半減したことになります。
この下落の背景はかなり複雑です。世界的な脱炭素政策の迷走、トランプ関税の発動、生成AIの不確実な未来、アメリカでのインフレ再燃懸念などいくつもの経済要因がからみあってテスラ株の価値が半減したのです。
下落したテスラ株は今後どうなるのでしょうか。EV事業に逆風が吹くデメリットと、イーロン・マスク氏がトランプ大統領の側近となったことのメリットは差し引きでプラスなのかマイナスなのかどちらでしょう。テスラ株の未来について考えてみたいと思います。
EV最大手のテスラを巡っては、世界的な4つの問題が絡まり合って株価の大きな下落要因を構成しています。順に説明しましょう。