10月4日、会見する自民党の高市早苗新総裁10月4日、会見する自民党の高市早苗新総裁 Photo:SANKEI

「ワークライフバランスという言葉を捨てます」――。自民党の高市早苗総裁の演説での発言が物議を醸した。この発言には賛否両論あったが、ワークライフバランスという言葉に違和感を持っていた人の中には、「ハードワークは大事だ」「本人がよければそれでいい」と考えた人もいたようだ。しかし、「本人が働きたければたくさん働けばいい」という考えには、見落とされている問題点がある。それは何か。(山田進太郎D&I財団COO 石倉秀明)

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「ワークライフバランスを捨てて働く」の是非
本人がよければそれでいいのか?

 10月4日に自民党総裁選が行われ、高市早苗さんが新総裁に就任した。

 首相指名選挙の行方は混沌を極めており、このまま史上初の女性総理になるかはまだわからないが、その高市さんが総裁就任時の演説で言ったことが話題になっている。

「私自身もワークライフバランスという言葉を捨てます。働いて働いて働いて働いて働いてまいります」

 これは自らの宣言、自民党の政治家に向けての言葉であるが、この言葉を受けてワークライフバランスという言葉に嫌悪感を抱いていた一部の経営者やビジネスパーソンが、「ハードワークがやっぱり大事だ」などとSNS上で反応していた。

 みなさんの中にも、ワークライフバランスという言葉に違和感を持っている人がいるかもしれない。

 ワークライフバランスという考え方に疑問を持つ人に多い意見として、「たくさん働きたいと思っている人は、たくさん働けるようにしたらいい」というものがある。これは一見、もっともな意見に見える。実際、これまでハードに働いてきた層を中心に、同調する声は多いようだ。

 つまり、働いている本人がよければ、その人は思う存分働けばよいという意見だ。

 しかし、本当に自分がよければ、長時間労働してもいいといえるのだろうか。複数の研究結果をひもときながら考えてみたい。