2011年から採用されたNPBの統一球が3年目の今季、秘密裏に「飛ぶように」調整されたことが明らかになり大騒動になっている。全球団が統一球を使うわけだから、特定のチームが得をすることはなく、ボールが飛ぶか飛ばないかということ自体はさほど問題ではない。問題はボールの調整をNPB内部だけでこっそりと行い、その事実を公表しなかったばかりか、「変更はない」と球界関係者やファンを欺き続けてきたことだ。

 NPBはなぜ、このような失態を演じてしまったのだろうか。

3年前にコミッショナーが導入推進
――事態の経緯を振り返る

 事態の経緯はメディアが盛んに報じており、読者もご存じだろうが、簡単に触れておこう。

 統一球の導入は加藤良三コミッショナーの肝いりで行われたことだ。理由は国際化への対応である。野球日本代表は2006年に始まったWBCを連覇し、ファンを歓喜させた。が、その一方で出場した選手たちは、WBCで使用されたアメリカ仕様のボールへの対応に苦しんだといわれる。

 それまで日本のプロ野球では、試合の主催球団が独自にメーカーに発注したボールを使用していた。それらはもちろん規格に従ったものだが、メーカーによって微妙に飛びが異なる。そこでMLBや国際野球連盟の試合球に感触が近い統一球(ミズノ社製)を使用することにしたわけだ。

 ところが統一球が導入された2011年は試合の様相が一変した。その前年の2010年にはレギュラーシーズン864試合で1605本のホームランが出たが、2011年は939本に半減。また平均打率もセが2割6分7厘から2割4分2厘、パは2割7分から2割5分1厘に落ちた。一方で平均防御率はセは4.13から3.06、パは3.94から2.95へ大幅に上昇した。ボールが飛ばなくなり、投高打低の傾向が現れたのである。

 当然、ロースコアの試合が多くなる。その方が緊迫感があっていいという人もいるだろうが、野球はやはり派手に打ち合う打撃戦のほうが盛り上がる。このままではただでさえ低落気味のプロ野球人気がさらに危うくなると、各球団のトップクラスから統一球の見直しを求める声が出るようになった。