WBC参加問題がようやく決着した。
大会を主催・運営する米国の会社「WBCI」が収益の7割近くを取り、日本代表のスポンサー権まで握っている大会の構造を問題視し、「そこが改善されなければ大会をボイコットする」とプロ野球選手会が言い始めたのが昨年7月。だが、1年経っても交渉に進展はなく、今年7月20日、選手会はついに不参加を決議した。
互いに一歩も引かないWBCIと選手会の間に立って苦慮したのがプロ野球を統括する日本野球機構(NPB)だ。WBCの収益構造が不公平であるとする選手会側の主張は了解しており米国側と交渉もしてきたが、一方で「ファンに注目される国際大会WBCに日本代表を出さないわけにはいかない」という本音がある。担当者を米国に派遣して交渉を継続する裏側で、選手会を翻意させる方策を練っていたようだ。
そしてひと月半経った9月4日、選手会の新井貴浩会長が不参加決議の撤回を発表。参加することが決定した。翻意した理由としてあげたのは2点。ひとつはユニフォームに企業ロゴなどをつけて得られるスポンサー料がNPBに入るようになったこと。もうひとつはNPB内に日本代表「侍ジャパン」の専門部局を立ち上げ、国際試合の入場料やスポンサー料、テレビ放送権料、グッズ販売などを事業化し収益を確保することだ(収益の見通しは年間10億円ほど)。
米国サイドの腹は一切痛まず
選手会は「大人の対応」か
ただ、ひとつ目のユニフォームのスポンサー料にはカラクリがある。日本ラウンドの興行権を持つ読売新聞社がWBCIから権利を買ってNPBに還元する形態なのだ。読売としては日本代表が参加しないことには興業として成り立たない。背に腹は代えられず、選手会の翻意を促すために自腹でスポンサー権を買ったというわけだ。
またふたつ目は、WBCとは関係なく「野球日本代表」のスポンサーを募り、NPBが新たな商売を始めるということだ。どちらにしても日本の企業が資金を出す。WBCIの腹は傷まないし大会のいびつな構造も変わらない。翻意した選手会も主張していたWBCIとの条件闘争に勝利したとは言えないのである。