単なる小康状態:米中対立が終わりにほど遠い理由Photo:Bloomberg/gettyimages

 米中貿易対立は再び小康状態に向かっているようだ。しかし、校庭での取っ組み合いのように、これは相対する2人が息を整えるための休憩に過ぎない。対立は終わりにはほど遠い。

 以前もそうだったように、重要な協議を控えていることが背景にある。今回は、スコット・ベッセント米財務長官と中国の何立峰副首相が25日にマレーシアで会談する予定で、両国を瀬戸際から引き戻すことが課せられている。

 ベッセント氏と何氏は17日に事前の電話会談を行い、その結果を「率直」で「建設的」な対話だったと、双方共に予想通り、当たり障りのない発表をした。ベッセント氏は慎重ながら楽観的な見方を示し、「事態は沈静化したと思う」と述べた。

 しかし、この外交的な静けさの前には見慣れた嵐があった。ドナルド・トランプ大統領が中国の レアアース規制 に関する最新の動きに激怒し、韓国で予定されている習近平国家主席との会談を中止すると脅したのは今月のことだった。トランプ氏はさらに踏み込み、中国製品に対する壊滅的な 100%の追加関税 を11月1日に発動すると宣言した。これは交渉で最大限の影響力を生み出すための動きだった。

 これは典型的な「 エスカレートして緊張緩和する 」戦術で、双方がもはや完璧に習得したとみられる戦略だ。まず、制御不能に陥る恐れのある危機を作り出す。そして、世界経済が固唾(かたず)を飲んで見守る中、解決策を交渉するために介入し、両首脳が自ら引き起こした災難を回避したとして勝利を主張できるようにする。

 今回の場合、中国は世界のサプライチェーンを事実上統制する意図を宣言することで危機を引き起こした。中国当局者によると、この行動は中国に対する輸出統制規則の抜け穴をふさぐ米国の措置への対抗策だったという。

 米中は貿易、技術、世界的影響力を巡る激しい競争に陥っている。米国は中国の不公正な経済慣行を非難し、半導体や人工知能などの先端技術へのアクセスを制限しようとしている一方、中国は米国が自国の台頭を封じ込めようとしていると非難している。