米中「貿易戦争再開」か「ビッグディール」か、新政権誕生前に早くも“外交大波”Photo:The Washington Post/gettyimages

トランプ氏「対中100%追加関税」
中国のレアアース輸出規制に“対抗”

 トランプ米大統領は10月10日、中国に対し11月1日から100%の追加関税を課すと、自身のSNSに投稿した。前日の9日、中国政府が今春以来となるレアアースの輸出規制強化を発表したことを受けたものと思われる。

 トランプ氏はSNSで中国が11月1日に「全中国製品の大規模な輸出規制」に踏み切るとして、そうした中国側の「異常な攻撃的な姿勢」への対抗措置としての実施を示唆した。

 米中貿易摩擦は、9月のトランプ関税を巡る米中間の枠組み合意やTikTokの米国事業の所有権などを米国に移す合意により一段落し、10月末のソウルでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の際のトランプ大統領と習近平国家主席の会談につながると考えられていた。

 だが双方の新たな規制や追加関税表明で、ソウルでの首脳会談の実現の見通しはあやしくなってきた。この時期に貿易紛争を再燃させるのは、首脳会談を前に双方が“強硬姿勢をみせて自らの有利な状況での解決を図るための布石だという見方もできる。

 だが、中国はロシア、北朝鮮との連携を強め、さらにグローバルサウスなどの新興国や途上国への影響力も強めている一方で、米国の自国優先主義のもとで西側諸国はかつてのようなまとまりを維持できていない。そうした状況のもとで、米中は対立激化から「貿易戦争再開」に進む可能性もある。一方で、トランプ大統領が、台湾問題なども含めて、中国と「ビッグディール」を構想している可能性も捨てきれない。

 新たな米中関係の構図ができる契機になるだけでなく、日本外交にとっても、新たな課題が生まれかねない緊張感が高まる局面だ。