ようこそ、そしておめでとう。あなたは「空飛ぶクルマの時代」を迎えるまで長生きできた。自動車が公道を走るのと同じように、個人所有で単独操縦の航空機が、制限のない空域を自由に運航できる時代だ。そして全て電動。興奮するのは当然だろう。未来が現実となった今、空飛ぶクルマは超軽量eVTOL(電動垂直離着陸)機と呼ばれる。もちろん、浮遊するスチュードベーカー(かつての自動車メーカーの車)や回転翼を持ったシボレーといった、三文SF小説で予言された姿とはあまり似ていない。消費者市場に到達した初のシリーズ生産型の超軽量eVTOL機である米ピボタル社の「ブラックフライ(2023年製)」には、車輪すらない。湾曲した胴体で離着陸する。また自動車としては非常にまれなことだが、水陸両用でもある。