株式会社明治クッカー代表の西原亮氏が「正直、読み返したくなかった本ランキング1位」と語るのが『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』だ。自分が目を背けていた「本当に大切なこと」を突き付けられた一冊だという。仕事に打ち込み続けた経営者が、40代になって改めて痛感した“お金と時間の本質”とは何か。(企画:ダイヤモンド社書籍編集局)
株式会社明治クッカー代表の西原亮氏
「読み返したくない本ランキング1位です」
――まずは、『DIE WITH ZERO』を読んだ感想を教えてください。
西原亮(以下、西原) この本は、“読み返したくない本ランキング1位”なんです(笑)。4~5年前に一度読んでいましたが、42歳になった今読むとまったく響き方が違いました。「老後の不安から、今しかできないことを我慢していませんか?」というメッセージが、胸に突き刺さる。まさに、今の自分に対して言われているようで、あまりに心に刺さりすぎて、読み返したくないくらいでした。
株式会社明治クッカー 代表取締役
慶應義塾大学卒業後、アメリカ・ニューヨークに拠点を置く投資ファンドと大手総合商社の合弁にて設立された経営コンサルティング会社に入社。主に全社組織改革、新規事業立案、新興国への海外事業展開戦略などのプロジェクトに参加。担当企業はグローバル大手印刷機器会社、イスラエル大手製薬会社、国内大手通信会社など多数。同社で5年の勤務を経て30歳を迎えた2013年、父親の跡を継ぐために明治クッカーに参画、同年8月より代表取締役に就任。万年赤字、廃業加速、低賃金、採用難、超アナログの産業において、売り上げ、従業員数ともに10年で700%の成長を実現。2019年より「にっしー社長」としてYouTube、およびTikTokにてビジネススキルの情報発信を開始。著書に、ベストセラー『コンサル時代に教わった 仕事ができる人の当たり前』がある。
――そこまでの本はなかなかないですよね。特に印象に残った部分はありますか?
西原 特に刺さったのは、「稼いだ金を使わない=時間と健康を犠牲にしている」という趣旨です。お金を稼ぐというのは、時間と体力を使って得ているわけです。それを使わずに貯め込むというのは、自分の命の一部を放置しているのと同じ。つまり、時間と健康を無駄にしているんですよね。
――耳が痛いですね。
西原 ほんとに(笑)。しかも私は“数値化のワナ”にハマっていました。売上や利益など、数字で成果を測ることに慣れているから、「数字が増えれば幸せも増える」と錯覚していたんです。でもそこには、「何のために稼ぐのか」という考えが抜け落ちていた。『DIE WITH ZERO』はそこを容赦なく突いてくるんです。
「お金の価値には有効期限がある」
――ほかに印象的だったフレーズはありますか?
西原 「お金の価値には有効期限がある」という言葉です。お金は、体力や感性があるうちに使わなければ、価値を発揮できません。キャスターの小倉智昭さんが「老後になるとできないことがあまりにも多すぎる」と語っていましたが、まさにその通りだと思います。今の1000万円と、60代の1000万円は、まったく意味が違う。お金の価値は、健康とセットなんです。
――その年齢にしかできない経験がある、というのは意外と意識できていないですよね。
西原 そうですね。この本では、「最強の投資先は経験だ」という考え方も出てきます。私の父は、自分が家業を継いだ直後に亡くなったんですが、最期まで語っていたのは“思い出話”でした。子どもが生まれたとき、サッカー部のとき、牛乳屋が大変だったとき……。思い出こそが、“記憶の配当”として人生を豊かにしていくんだと実感しました。
お金は使えば減るけれど、経験は語るたびに増えていく。だからこそ、仕事だけでなく、今しかできない体験にも積極的に投資しようと心から思いました。
「資産のピークは45歳」お金を使う最適なタイミングを考える
――お金を“どう使うか”については、どんな考えに変わりましたか。
西原 この本を読んで、私は「資産のピークは45歳」と決めました。多くの人は60代にピークを置きますが、その頃には健康も感度も落ちていて、使い切る前に終わってしまう。45歳前後、つまり健康と時間がまだ両方あるうちにこそ、経験に投資すべきだと思うんです。
「貯めること」よりも「使うこと」に目的を置く。この視点を持てるかどうかで、人生の満足度は大きく変わると思います。

――「年齢でお金の使い方を考える」という意味では、本書で紹介されている「タイムバケット」も印象的ですよね。
西原 はい、『DIE WITH ZERO』では、人生を5年、10年単位で区切って、その時期にしかできない経験を書き出していくことを勧めていますが、私も実際にやってみました。
たとえば、「海外に住む」と書いても、80代では現実的に難しい。50代ならまだいける――そうやって、人生でやりたいことの“期限”が見えてくるんです。実際に書き出してみると、リストがなかなか埋まらない。つまり、“やりたいこと”を考えてこなかったという現実に気づかされるんです。
――たしかに、実際に書き出してみると、それを痛感しますよね。
西原 この本は、“お金の使い方”ではなく“生き方”の本です。「何のために稼ぎ、どう生きるのか」。この問いに真剣に向き合うきっかけをくれる。40代以降の人こそ、もう一度読み直してほしいです。
ノートでも、エクセルでも構いません。「自分は何をしたいのか」「どの年代で実現したいのか」を書き出してみてください。きっとみなさんもショックを受けますよ(笑)。でも、それが“後悔しない生き方”の第一歩になると思います。
(本原稿は、『DIE WITH ZERO』(ビル・パーキンス著・児島修訳)に関連した書き下ろし記事です)





