米ユタ州ミルフォード近郊にあるファーボ・エナジーの地熱発電施設「ケープ・ステーション」の掘削パッドPHOTO: KIM RAFF FOR WSJ
米国に住む数億人の足元には、これから活用されるのを待つ実質的に無限のエネルギー供給源がある。
それを入手するのに必要な設備は、ほぼ100%が国産か近隣の同盟国からのものだ。しかも、他の低炭素・再生可能エネルギー源とは異なり、民主・共和両党の政治家が推進に前向きな立場だ。
唯一の問題点は、母なる大地そのものが1世紀以上にわたり、最も容易に利用できる資源以外への到達の試みを全て阻んできたことだ。
地中深い場所にある熱源の利用を目指すプロジェクトは、失敗するか、期待通りにいかないことを何度も繰り返してきた。コスト超過が妨げになってきた。最大の問題点は、旧式の地熱発電所が、既にある天然の地熱貯留層を活用する場合にしか使えなかったことだ。
だが今、 地熱エネルギー推進派 は、新しい技術と手厚い税優遇措置のおかげで、ついに競合するエネルギー源にコストと信頼性で対抗できる準備が整ったと話している。地熱エネルギーは、ジョー・バイデン前大統領が2022年に成立させたインフレ抑制法(IRA)で手厚い補助金が提供され、ドナルド・トランプ大統領の「大きくて美しい」税制・歳出法でそれが維持される唯一の低炭素・再生可能エネルギー源となった。
米エネルギー省の数十年に及ぶ基礎研究への投資が、過去にこの技術が抱えていた問題を回避する新タイプの地熱発電の商用化という形で実を結んだ。この方法だと地下水が自然に存在する必要はなく、代わりに地表で供給される非飲料水を地下深く送り込み、地熱を抽出してそれを地表に戻し、発電に利用できるのだ。
ケープ・ステーションを訪れたファーボのティム・ラティマーCEO(左)と主要な資金提供者のビル・ゲイツ氏PHOTO: KIM RAFF FOR WSJ
この技術を開発する米スタートアップ企業の最大手で最も知られているファーボ・エナジーは、マイクロソフト共同創業者のビル・ゲイツ氏から最近1億ドル(約153億円)余りを獲得し、2017年の創業以来の資金調達額は約7億ドルに達した。
これによりファーボをはじめとする数社の企業は、固い花こう岩をこれまで以上に深く掘削するのが可能だと実証できるようになる。







