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最初は徐々に、だった。そして米オープンAIはあるとき一気に、完全に捉えることが困難な巨大企業のような存在になった。
まだ利益は出ていない。年間売上高は アマゾン・ドット・コム の2%に過ぎない。がんの治療に役立ったり今の仕事や生活を一変させたりする、神のような人工知能(AI)の扉を開くという期待以外、会社の未来がどうなるかははっきりしない。それでも期待と興奮に満ちている。
だが、もしオープンAIがつぶれたらどうなるのだろう。
オープンAIの資金繰りを支えることを目的にした、テクノロジーを巡る多くの 複雑であやしげな取引 が行われ、同社が大き過ぎてつぶせなくなったという深刻な懸念が生じている。
別の言い方をしよう。サム・アルトマン最高経営責任者(CEO)が描くAIの未来を巡る大げさな宣伝と期待が実現しなかった場合、オープンAIは恐らく米国経済をリセッション(景気後退)から遠ざけている分野にシステミックリスクを引き起こす恐れがある。
こうした状況はとりわけスタートアップにとってはなかなか到達できない領域だ。インターネットバブルの際に(当時急成長していたペット用品販売の)ペッツ・ドット・コムがつぶれたらどうなるかを心配した人はほとんどいなかった。
2008~09年に銀行や自動車大手のクライスラー(現在は欧米自動車大手ステランティスの傘下)とゼネラル・モーターズ(GM)が救済され、われわれは一部の企業が大き過ぎてつぶせなくなったときに米国では何が起きるかを目の当たりにした。
アルトマン氏はーー意図的であれ、偶然であれーートランプ政権が国防と経済安全保障の名の下に国家的チャンピオンを選び出すという独自の方針を採用する中、オープンAIの評価額を5000億ドル(約77兆円)に押し上げることに成功した。







