NISAで大きく儲けた場合は売却もアリ!
“とにかく増やす”に縛られず必要な分は利益確定を!

 ここからは、NISAで運用している今の資産をどうすべきか、NISAに詳しいファイナンシャルプランナーでMoney&You代表の頼藤太希さんに解説してもらおう。

 まずは「現時点で含み益が出ている株や投資信託」について。NISAの基本は「長期投資」だが、利益が出ているなら、何もせずにずっと保有し続けるのが正解なのだろうか? 頼藤さんは次のようにアドバイスする。

「NISAの最大のメリットは、運用で得た利益に税金がかからないことです。同じく利益が非課税になるiDeCo(個人型確定拠出年金)もありますが、こちらは原則60歳まで引き出せない老後資金専用の制度。一方のNISAは売買のタイミングが自由で、しかも売却した分の投資枠が復活します。この特徴は積極的に活用すべきです」(頼藤さん)

 基本となる考え方は、お金を使う目的があるかどうか。ライフイベントや家族との旅行などでまとまった資金が必要な場合は、タイミングを見て利益確定するのも手だ。

「長期運用や“とにかく資産を増やす”ことばかりを意識しすぎて、利益が出ても使わずに我慢してしまう人も多いと思います。でも、人生には経験や思い出といった“今しかできないこと”も大切です」(頼藤さん)

 一方で、今すぐ使う予定がないなら、今後も値上がりが期待できる株などについては、そのまま保有を続けてOK。複利効果で利益が伸びていく可能性があるからだ。

 では、逆に「現時点で含み損が出ている株や投資信託」に対しては、どんな戦略で臨むのがよいのだろうか?

「NISAは、利益が出なければ非課税のメリットを享受できません。購入時の根拠や想定と実際の値動きにズレが生じてきた場合は、ずるずる保有せずに潔く売却しましょう」(頼藤さん)

 株の場合は、中長期で回復が見込めるかどうかが判断のポイントに。「業績の下降トレンドが続いている」「減配が続いている」「優待の内容が悪化した」「法改正や事業環境の変化があった」「ネガティブな風評リスクが出てきた」などが当てはまるケースは、回復には時間がかかる可能性が高い。

「これらの要因が1つでも当てはまるなら見切りをつけ、上昇が見込める銘柄に乗り換えていいでしょう」(頼藤さん)

 投資信託の場合は、アクティブ型とインデックス型でチェックポイントが異なる。まず、アクティブ型は、運用のプロが独自の判断で銘柄選定を行い、より高いリターンを狙うもの。投資信託ごとに成績に差が出やすく、判断基準は運用成績だ。

「同タイプの投資信託と比べて成績が見劣りしていたり、運用の目安とされている指数を下回る成績が続いていたりする場合は要注意。原因は市場環境ではなく、投資信託の運用力の問題です。成績の良いモノに乗り換えるのが賢明です」(頼藤さん)

 一方で、インデックス型は指数に連動することを目指しているため、同タイプなら成績に大きな差は出にくい。チェックすべきは、信託報酬などのコストだ。より低コストな商品が登場している場合は、乗り換えも検討しよう。加えて、頼藤さんは「信託報酬以外のコスト」にも注目すべきとアドバイスする。

「2024年4月から目論見書に『総経費率』の記載が義務化されています。これは、信託報酬に加え、実際の運用にかかったコスト全体を示す数値で、総経費を平均純資産額で割ったもの。これまで見えにくかった“隠れたコスト”がわかるので、信託報酬と併せて確認しましょう」(頼藤さん)

 インデックス型では、わずかなコストの違いが長期的なリターンに大きく影響する。しっかりチェックするのを忘れずに!