トランプ関税、まぎれもない巨大な歳入源Photo:Bill Clark/gettyimages

 弁護士は主張を通すために事実を誇張しがちだが、それでも5日の米連邦最高裁判所の口頭弁論でトランプ関税の正当性を主張しようと、政権側の代理人を務めるジョン・サウアー訟務長官が「歳入のための関税ではない」と言い放ったのは、ばかばかしい大間違いだ。

 どう見ても「歳入のための関税」ではないか。ドナルド・トランプ大統領が関税を好むのは、まさに国庫の収入源になるからだ。トランプ氏は米国に商品を輸出する特権について他国に金銭を請求することを長年夢見てきた。自身の課した関税によってどれだけの現金がもたらされたか、いかに所得税の代わりとなり、いかに農家への補助金をまかなうかを自慢し、さらには関税還付金の支給にまで使える可能性があるとしている。5日に出廷したスコット・ベッセント財務長官は、関税が赤字削減に寄与したと称賛した。

 ならば、サウアー氏はなぜ違うと主張したのだろうか。合衆国憲法が関税と税金によって歳入を得る権限を議会に託しているからだ。サウアー氏はトランプ氏の狙いが本人の実際の発言とは違うと主張することで、最高裁に関税を認めさせようとしている。

 この訴訟の行方には関税だけではなく、国家統治の基本原理もかかっている。憲法起草者たちは、大統領が国王のような独裁的権力を手に入れることがないよう、議会に財政の権限を与えたのだ。

 議会は何十年にもわたり強大な大統領に浸食され、この原理はむしばまれてきたが、今年に入り、さらに拍車がかかっている。連邦政府に目をかけてもらおうとする企業からトランプ氏が恣意(しい)的に資金や株式を巻き上げ、大学や州への補助金を差し止め、法律によって設立された国際開発局(USAID)や教育省などの政府機関を事実上なきものにしたためだ。上下両院の共和党議員はトランプ氏を支持しただけでなく、鼓舞することも多かった。