米司法省を「牛耳る」トランプ氏 SNS誤送信で浮き彫りPhoto:The Washington Post/gettyimages

【ワシントン】2期目のドナルド・トランプ米大統領は、1期目には願ってもかなわなかった形で司法省を掌握している。

 当時、トランプ氏は司法省幹部への不満を公然とぶちまけはしたが、側近たちが法制度を信頼するよう促すと、その助言におとなしく従っていた。だが2期目は、誤送信した1本の投稿だけでトランプ氏の要望が通るようになっている。

 トランプ氏は9月20日、パム・ボンディ司法長官に非公開のメッセージを送ったつもりだった。事情に詳しい政府当局者らはそう話す。同氏が敵視する元連邦捜査局(FBI)長官のジェームズ・コミー氏らを起訴するように促す内容だった。「これ以上の遅延は許されない。われわれの評判と信頼性が失われている」とトランプ氏は記した。

 トランプ氏は宛先を「パム」にし、ボンディ氏に直接送信したと思っていた。それが公開されていたのには同氏も驚いたと、当局者は明かす。ボンディ氏は気が動転し、ホワイトハウスの側近とトランプ氏に電話をかけた。トランプ氏はその後、第2弾を投稿することに同意した。その中でボンディ氏は「素晴らしい仕事」をしていると称賛した。

 誤送信はくしくも、トランプ氏が命令と混乱を通じて、いかに司法省の内部に変化を起こしたかを垣間見る機会になった。

 メッセージ送信の5日後、 コミー氏は起訴された 。今週の議会公聴会でこのメッセージについて尋ねられたボンディ氏は「(トランプ氏が)何年も言い続けてきたことしか言っていないと思う」と答えた。

 コミー氏は8日、偽証と司法妨害の罪状に対して 無罪を主張した 。同氏の弁護士は、起訴されたのはトランプ氏のコミー氏に対する恨みだけが理由だと主張するつもりだと述べた。

 トランプ政権はすでに首都ワシントンとニューヨーク州で同氏と衝突した司法省の上級検察官数十人を解任している。だがバージニア州東部地区の連邦地検は先月、さらなる逆鱗(げきりん)に触れた。トランプ氏の任命した検事正が、コミー氏の起訴に相当する理由はないと判断したためだ。