Photography by Fred Mery for WSJ
【名古屋】東京発の新幹線は観光客で混み合っている。だが京都や大阪と結ぶ「ゴールデンルート」を高速移動する際、彼らが名古屋で途中下車することはあまりない。
「名古屋飛ばし」と地元の人は呼ぶ。名古屋は素通りされている。トヨタ自動車の本拠地がある中京工業地帯の中心であり、日本で4番目に人口の多い大都市だが、10年前の世論調査では「最も魅力に欠ける都市」となった。その結果に住民は今も傷ついている。
名古屋在住16年のエリサベス・ヨピス氏は、素通りをやめさせたいと考え、自身が愛する街の退屈なイメージを覆し、より多くの観光客を呼び込むことを目的に、旅行サイト「Nagoya is not boring(ナゴヤはつまらなくない)」を運営している。
「誰もここに来ないことに気づいた。それはなぜか?」。スペインのマヨルカ島出身の彼女は問いかける。市内には、第2次世界大戦後に鉄筋コンクリート造りの天守閣が再建された名古屋城や、三種の神器の一つ「草薙神剣」がまつられる熱田神宮がある。ヨピス氏は米国やスペイン、オーストラリアからの観光客を案内して市内を巡り、食べ物と日本酒を味わってもらう。また伝統工芸の絞り染めで知られる有松を訪ね、職人の手仕事を見学する。この地区は400年前から布を染めて複雑な模様を描く技術を磨いてきた。
「ただの一日も名古屋がつまらないと思ったことはない」とヨピス氏は言う。
日本には観光客が殺到している。だが、正当な恩恵を得ていると実感する地域ばかりではない。ベネチアやバルセロナの住民をいら立たせる「オーバーツーリズム」は、大阪や京都の地元住民も怒らせている。着物姿の観光客が街路や寺を埋め尽くし、ソーシャルメディア用のスナップ写真を撮っている。







