「会社に使われる人」と「会社を使う人」たった1つの発想の違い【作家・楠木新】写真はイメージです Photo:PIXTA

会社とは所詮、幻想である――著述家として多くの人を取材してきた経験から、会社組織の本質に着目して提言する楠木新さん。そこには「個」としての強みを生かし、会社生活を楽しいものにするためのアドバイスが込められています。

「会社とは所詮、幻想である」
長年の経験からたどり着いた

 少し過激に聞こえるかもしれませんが、私は長年会社組織の内部に身を置き、多くのビジネスパーソンに取材を重ねる中で、ある考えに至りました。

「会社とは所詮、幻想である」

 生命保険会社で支社の総務部長をしていた頃、事務職の女性社員から仕事上の悩み相談を受けたことがありました。内容そのものは深刻というより、彼女の生真面目さゆえに生じた葛藤のように思えました。

精神的にかなり追い込まれている様子だったので、私はその考えを、アドバイスとして言葉にしました。

「会社は所詮、幻想なのだから、それほど真剣に考えなくてもいいですよ」

 彼女は一瞬ほっとした表情を見せた後に、すぐにこう返しました。

「でも、上司のあなたからそんな言葉は聞きたくありません」

 横にいた次長は大笑いし、その後この話は部員の送別会での彼の定番ネタになりました。

 もちろん、幻想だからといって会社そのものに意味がないと言いたいわけではありません。会社は商品やサービスを提供する重要な存在で、従業員にとっては給与などで生活の安定を支えています。また、人は幻想や夢を追って生きる存在でもあるからです。

 この私の発言の背景には、私が、「会社」というものは、立場によってまったく違う姿を見せる存在だと実感していたことがあります。

 当時私は、人事部門で、総合職や一般職、営業職の各々の職種の社員と人事面談を重ねていました。その時に各自が把握している会社の姿は相当異なることに気が付きました。