名古屋には単に規模だけではない独自の企業序列が存在する。トヨタ自動車ですら一目置くのが、鉄鋼商社の岡谷鋼機だ。さらに、独自の成長を遂げている興和などが近年存在感を増している。特集『名古屋大激変! 教育・マンション・産業』(全10回)の#1では、名古屋経済界の「真の序列」をつまびらかにする。(ダイヤモンド編集部 山本 輝)
名古屋財界は閉鎖的?
歴史が生んだ独自の企業序列の正体
「こうした小心翼々たる利殖家的態度は、古くから気心の知り合った者同士を小さく固まらせて、一つの閉鎖的な連帯の場を作り上げてしまう。(略)その結果、名古屋財界の特色として、排他性ということが、やかましくいわれるようになる」──。
慶応年間から昭和初期までの名古屋の企業家の歴史をたどった、城山三郎の名著『創意に生きる 中京財界史』の一節だ。愛知県生まれで経済小説のパイオニアである城山は、自身の処女作の中で名古屋財界の特徴をこのように表現している。
同書は、そうした環境の中でも守旧派の情勢に反発し発展を成し遂げた「創意の人」たちの姿を追った作品なのだが、確かに「名古屋の人たちは排他的だ」と言われれば、妙に納得する読者も多いのではないか。
排他的とは、良く言えば互助意識が高いが、悪く言えばインナーサークルで閉じこもりがちな集団ということでもある。
実際に、名古屋財界では、資本の理論とは異なる独自の“序列”が存在する。実績と信頼を重んじる名古屋財界では、単に規模が大きいだけでは名門企業とは認められず、何よりも歴史と格がものをいうのだ。
それでも、近年は経済環境の激変によって名古屋財界の勢力図が塗り変わりつつある。この地域には一体、どのような企業序列があるのか。
あのトヨタ自動車ですら一目置く、知られざる名門企業の系譜をつまびらかにしよう。