「つぶしがきく」かつての文系の花形学部に優秀な学生が来なくなったワケ写真はイメージです Photo:PIXTA

かつては「つぶしがきく」学部として、優秀な学生の宝庫だった法学部。だが、現在では就活に不利とされ、人気が低下しているという。なぜ花形学部は、輝きを失ってしまったのか?東京大学名誉教授(専門は民法学)で弁護士の内田 貴が、法学部の現状に警鐘を鳴らす。※本稿は、内田 貴編著『弁護士不足――日本を支える法的インフラの危機』(筑摩書房)の一部を抜粋・編集したものです。

かつてトップだった法学部は
司法制度改革で不人気学部に

 最近、ある私立高校で法学について話をする機会がありました。大変偏差値が高く、卒業生が各界で活躍している名門女子高です。私の話が終わって、生徒との質疑応答に入ったときの話です。こんな質問がありました。

「先生の話を聞いて法学に興味を持ったけれど、法学部に進学すると就職に不利だと聞いているので、どうすればいいでしょうか」

 この質問を聞いて、私には隔世の感がありました。私が高校生の頃は(というともう半世紀以上前の話ですが)、法学部は「つぶしがきく」学部と言われ、特に進路の決まっていない、文科系の成績のいい生徒はたいてい法学部を勧められました。

 法学部を出ていればどこにでも就職できる、と考えられていたのです。

 しかも、法学部に進学する人の中で法曹をめざしている人はごく一部であり、大部分は法曹以外の仕事に就こうと考えている人たちでした。

 では、なぜいま、法学部が就職に不利と思われるようになり、人気が落ちてきたのか。そこにはいろいろな理由があると思います。

 1つは、司法制度改革です。この改革の結果、法学部が法科大学院の前段階として経由する教育課程と理解されるようになり、法曹をめざさない人にとっての魅力が薄れたこと。