「お金に余裕がある人」と「いつもお金に追われる人」。その差を生み出しているのは、収入ではなく“お金の使い方”だという。ブランド品や贅沢な体験より、長期的に幸福度を高める“ある支出”を優先している点こそ、成功者たちに共通する習慣だ。世界的話題作『アート・オブ・スペンディングマネー 1度きりの人生で「お金」をどう使うべきか?』の著者モーガン・ハウセルは、それを「もっともROI(投資利益率)の高いお金の使い方」と呼ぶ。本書が示す“意外すぎるベストな使い道”とは何か――。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

人生の幸福度は「お金の使い方」で決まる。成功者が選ぶ“ベストな使い方”とは?Photo: Adobe Stock

人生を幸せにする「意外なお金の使い道」

旅行、美味しいもの、趣味……幸せになるお金の使い道はさまざまであり、人によってそれは違うだろう。

しかし、『アート・オブ・スペンディングマネー』の著者モーガン・ハウセルは、本書の中で意外なお金の使い道を提案している。

それは「貯金」だ。一般的に考えれば、貯金はお金を貯めることであり、むしろ使うこととは真逆のことに思える。

しかし、著者のハウセルは、次のように言っている。

私は昔から貯蓄に励んできた。しかし、貯蓄したお金を「使われていない資産」だと考えたことは一度もない。将来の買い物のためにお金を貯めているという意識すらない。すべての貯蓄を、自分の本当の目標である経済的自立に向かうためのチケットだと考えている。預金口座に500ドルを入れることを、500ドル分の自立を買うことだと考えているのだ。

それは私にとって、500ドルのテレビを買ったのと同じことだ。購入対象となるものの価値が違うだけで、お金を「使った」ことに変わりはない。

――『アート・オブ・スペンディングマネー』より

つまり、彼にとって貯金は、自由を「買っている」ということなのだ。ハウセルは、次のようにも述べている。

私は、自立のためなら迷わずお金を使う。思い通りに日々の時間を過ごすために、惜しみなくお金を使っている。自立し、自分の好きな人と、好きなときに、好きな時間を過ごすためになら、際限なくお金を使っていいと思っている。

私にとって、これまでお金を使ったものの中で、自立ほど高いROI(投資利益率)をもたらしてくれるものもない。

――『アート・オブ・スペンディングマネー』より

「貯金する=自立を買う」という概念を持っている人は少ないのではないだろうか。しかしこの考え方を持つことは、幸福な人生を歩むためには非常に役立ちそうだ。

私たちが新しい家電(食洗器や乾燥機付きの洗濯機など)を買って生活に余裕が生まれるのと同じように、貯金をすることは、お金のことで悩みすぎることを減らしたり、嫌いな仕事を受けずに済んだり、急なトラブルにも対処できる心の余裕を生んだりしてくれる。それは形のあるモノではないが、間違いなく人生を豊かにするお金の使い道なのである。

(本原稿は、『アート・オブ・スペンディングマネー 1度きりの人生で「お金」をどう使うべきか?』(モーガン・ハウセル著・児島修訳)に関連した書き下ろし記事です)