記憶の「短期」と「長期」を使いこなす
では、具体的にどう「有益」なのでしょうか。
「マジカルナンバー7±2」が示すように、私たちが一度に処理できる情報(短期記憶)は非常に限られています。たとえば、15個のバラバラな英単語を一度に見せられても、すべてを覚えるのは困難です。
ここで「上の言い換え(抽象化)」を使います。その15個の単語が、もし「動物」「食べ物」「乗り物」という3つのグループに分けられるとしたらどうでしょう?
私たちは「15個のバラバラな情報」としてではなく、「3つの意味あるかたまり(チャンク)」として情報を処理できます。これなら、「7±2」の範囲に余裕で収まります。
「かたまり」にすれば、無限に覚えられる
これが「上の言い換え」による暗記のハックです。バラバラな具体情報(下)を、共通項でくくって抽象的な上位概念(上)にまとめる。脳は、その「まとめた概念」だけを短期記憶に保持すればよくなります。
「トマト、キュウリ、レタス…」と7個覚えるのではなく、「野菜」と1個覚えてしまうのです。この「かたまり(チャンク)」を作る作業こそが、勉強における「理解」や「整理」の正体です。
この技術を使えば、理論上、覚えられる量はほぼ無限に増やせます。
「思い出す」ときこそ「下の言い換え」が効く
さらに重要なのは、「思い出す」ときです。インプットした知識は、使えなければ意味がありません。
テストで「野菜の例を挙げよ」と問われたとします。このとき、頭の中の「野菜(上)」という引き出しを開け、「たとえば、トマト、キュウリ、レタス…(下)」とスムーズに具体例を取り出す必要があります。これが「下の言い換え(具体化)」の力です。
「上の言い換え」で知識を整理して棚(長期記憶)に入れ、「下の言い換え」でその棚から自在に取り出す。この往復運動こそが、本当の意味で「記憶した」と言える状態であり、あらゆる勉強のゴールなのです。
丸暗記から「理解する学習」へ
歴史の年号、数学の公式、化学の元素記号――これらを意味のない情報(具体)として丸暗記しようとするから苦しいのです。
「なぜこの公式が成り立つのか(上)」「この年号が持つ意味は何か(上)」と、一つ上の概念でまとめる。「その公式をどう使うのか(下)」「その年号の結果、何が起きたか(下)」と具体化する。
この「上」と「下」の往復こそが、単なる丸暗記を「深い理解」に変える鍵となります。
※本稿は、『成績アップは「国語」で決まる! 偏差値45からの東大合格「完全独学★勉強法」』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。









