「12月はシフトを増やして」に応えると“働き損”になる?ならない?写真はイメージです Photo:PIXTA

年末が近づいてきた。繁忙期を迎える業界や企業も多い。パートで働く人にとっては稼ぎ時ともいえる。そんな中、気になるのが「パート収入の壁」だ。繁忙期にシフトを増やすと、壁を超えてしまって手取りが減り、“働き損”になるのではないか……心配している人もいるだろう。今回は、「パート収入の壁」について知っておくべきポイントを解説する。(ファイナンシャルプランナー〈CFP〉、生活設計塾クルー取締役 深田晶恵)

12月にシフトを増やすのは損なのか
それとも得なのか

 12月は、年末商戦やクリスマス、忘年会などで小売業や飲食業は繁忙期となる。パートで働く人は、勤務先から出勤日を増やすように要請を受けたり、急な残業を頼まれたりすることもあるだろう。

 そこで頭を悩ますのがいわゆる「パート収入の壁」である。扶養内で働いているパートタイマーは「繁忙期にシフトを増やす要請があっても、扶養から外れてしまうのが怖くて協力できない」と言う。

 勤務先の繁忙期に協力したい気持ちはあるし、働く時間が増えると、その分、収入も増える。しかし配偶者の扶養から外れると、自分または配偶者の手取りが減ってしまうのが怖いから、シフトを増やせないと考える。

 実は「パート収入の壁」は複数あり、仕組みは複雑。パートタイマーはもちろんのこと、雇用する現場の管理職も仕組みを正確に理解しているとは言い難いのが現状だ。

 一つの事例でクイズを考えてみた。パートで働く人だけでなく、その配偶者、パートさんのシフトを組む管理職も一緒に答えを考えてほしい。

 クイズは、夫の扶養内で働くようにしているAさんは、12月のシフトを増やす要請を受けるべきか、それとも断るべきなのかというもの。

【Aさんの状況】

 パートタイマーAさんの時給は1350円で1日5時間、週3日シフトの条件で労働契約を結んでいる。

 月給は8万7000円前後、年収は約105万円となる。

 勤務先は従業員数51人以上の会社なので、年収が106万円を超し、諸条件を満たすと社会保険に加入する「適用事業所」である。

 社会保険への加入義務が発生する「106万円の壁」のギリギリ手前で働いているAさん。ギリギリにするつもりはなかったが、途中から時給が上がったため、結果としてこうなった。あともう1日働くと、「106万円の壁」を超える。

 勤務先から、12月はあと数日多くシフトに入ってほしいと要請を受けているが、受けてもいいだろうか。

 答えは、今年の1~12月の年収が106万円を超えることになっても「シフトを増やす要請は受けてもいい」である。

 その理由を解説しよう。