「仕事はできないけど、彼に任せたい」――この矛盾した第一声は、相手に「その理由を否定したい/確かめたい」と強く思わせる。否定の余地を広く残した「否定に開かれた意見」の使い方とは? 最初の一言と準備されたロジックで人は動く。ただし断言するほど、根拠は考え抜かなければならない。結論を磨き上げ、1メッセージにして相手に届けるコツを、書籍『1メッセージ 究極にシンプルな伝え方』から抜粋して紹介する。

「仕事はできないけど、彼に任せたい」→この矛盾が、人を動かす最強のロジックだったPhoto: Adobe Stock

「仕事はできないけど、彼に任せたい」→この矛盾が、人を動かす最強のロジックだった

 最初に一言を話す。それだけで、相手に“あなたの話をもっと聞いてみたい”と思われる人がいる。結果として、その後に続く話が刺さっていき、相手を動かしていく。

 そのような人を動かすのが上手な人の多くが使っている、最初に相手に“あなたの話をもっと聞いてみたい”と思わせる伝え方がある。

「仕事ができる人に任せたいですね」と言われても“話をもっと聞いてみたい”とは思われない

 最初の一言で“あなたの話をもっと聞いてみたい”と思われる人たちに共通するのは、最初に思いっきり「否定に開かれた意見」をすることだ。

 否定に開かれた意見とは、それを聞いた相手にとって否定できる余地のある意見のことである。このため、思いっきり否定に開かれた意見とは、相手にとって否定できる余地が大きい意見を意味する。

 例えば、あるプロジェクトを誰に任せるかを議論しているときに、次のような意見を言ったとする。

「仕事ができる人に任せたいですね」

 これは「否定に開かれた意見」ではなく、あまり「否定に開かれていない意見」だ。プロジェクトを任せるときに「仕事ができない人に任せたい」という人は多くはないだろう。なので、否定の余地がほとんどないのだ。

 否定の余地のない「否定に開かれていない意見」は正しいのだが、相手にとっては言われなくても当たり前なので、情報としての新しさも価値もない。このため、「否定に開かれていない意見」を言われても相手は興味関心を持てず、“話をもっと聞いてみたい”とは思わないのだ。

「普段は仕事はできないけど、ここは杉野さんに任せたい」と言われたら“話をもっと聞いてみたい”と思われる

 こういう場面で、相手に“話をもっと聞いてみたい”と思われる人であれば、最初に次のような意見を言う。

「普段は仕事はできないけど、ここは杉野さんに任せたい」

 一見では矛盾していると思えるような意見だ。相手からするとその違和感から、普段は仕事ができない人に任せてもよいのかと強く否定したくなる。すなわち、否定の余地が大きい。

 そして、具体で「杉野さん」とピンポイントで指名されたことで、他の候補者を代替案として具体的に挙げることでいくらでも否定ができるので、ここでも否定の余地が大きい。

 しかし、そのような否定の余地が大きい、思いっきり「否定に開かれた意見」を言うのはどういう根拠なのだろうか、自分には知らないなにかがあるのではと相手は興味関心を持ってしまう。

 人を動かすのが上手な人は、そうして最初の一言で相手の興味関心を惹きつけておいて、例えば次のようにしっかりと根拠を補足する。

「杉野さんはほとんどのプロジェクトは下手だけど、前職の職場がこういうタイプだったそうで、このタイプのプロジェクトだけは得意で、似たようなあの難しいA商事やB電鉄のプロジェクトで結果を出していて推せると思います」

 こうして、最初に思いっきり「否定に開かれた意見」を1メッセージで言って相手の興味関心を惹き、その後にしっかりとした根拠を伝えると、「興味関心+論理」で相手に刺さり、相手が動いてくれたりする。

 最初の一言で相手に“話をもっと聞いてみたい”と思われるのが上手な人たちは、最初に思いっきり「否定に開かれた意見」を言うのが上手な人たちなのだ。

最初の一言で、思いっきり「否定に開かれた意見」を言おう

 マジシャンは、最初の一言で思いっきり「否定に開かれた意見」を言うのが上手だ。トランプを使ったマジックで「あなたが引いたカードは1から13のどれかです」と言われても、“話をもっと聞いてみたい”とは思わない。必ず当たるので常に正しく、情報としての価値がなく、まったく否定に開かれていない意見だからだ。

 そこで「あなたが引いたカードは1から12のどれかです」と言われたらどうだろうか。13が出る可能性だけ否定に少し開かれるようにはなったが、まだあまり否定に開かれておらず、やはり“話をもっと聞いてみたい”とは思わない。

 マジシャンはだからこそ「あなたのカードは7です」と、思いっきり「否定に開かれた意見」を言う。そうして、聴衆の興味関心を惹きつけて、そして本当に7を当てるショーをすることで聴衆を魅了している。

 もちろん、思いっきり「否定に開かれた意見」を言うからには、しっかりとした根拠が必要であり、その根拠を考え抜いていないといけない。

 マジシャンが「あなたのカードは7です」と相手を惹きつけておいた上で、考え抜いて事前に入念に準備しておいたトリックを使って7を当てるように。

 相手に“話をもっと聞いてみたい”と思ってもらえるように、しっかりと根拠を考え抜いた上で、最初の一言で勇気を出して思いっきり「否定に開かれた意見」を言ってみよう。

(本原稿は『1メッセージ 究極にシンプルな伝え方』を一部抜粋・加筆したものです)