再婚して先妻の子と実子を一緒に育てた
田中孝司さん(仮名)のケース

 田中家は、夫の孝司さん、妻の美恵子さん、長男の信一さん、長女の智子さんの4人家族でした。長男の信一さんは、交通事故で死別した先妻の子です。
美恵子さんは信一さんを実の子どものように可愛がって、孝司さんと結婚後に生まれた長女の智子さんと同じように育ててきました。

 そんな中、夫で父親である孝司さんが亡くなります。その際は孝司さんの遺言通り、法定相続分にしたがって、妻の恵美子さんが2分の1、信一さんと智子さんが4分の1ずつ相続しました。

 そして孝司さんが亡くなって3年後、母の美恵子さんも亡くなってしまいます。

 その相続手続き中に問題は起きます。信一さんと智子さんは遺産を2分の1ずつ相続しようとしたところ、司法書士から信一さんは法定相続人ではないので、遺産はすべて智子さんが相続すると言われてしまいます。

 信一さんは、美恵子さんに家族同然に可愛がられていたとはいえ、美恵子さんとは直接の血縁関係がありません。遺言がなければ法定相続人以外の人が遺産を取得することはできないのです。母の美恵子さんは遺言を作成していませんでした。

 信一さんと智子さんは良好な関係でしたので、智子さんは自分の遺産の半分を信一さんに渡すことを提案します。しかしそうなると贈与税が発生してしまいます。相続人がいったん相続した財産を別の人に渡せば、それは贈与となり、高額な贈与税を納める必要があるのです。

 こうならないためには、

(1)美恵子さんが生前、信一さんと養子縁組を行い、信一さんを美恵子さんの養子にして、法定相続人とする、

(2)美恵子さんが、生前に信一さんにも財産を相続させるという内容の遺言を作成する、

このような対策をとっておけば、ムダに税金を払わなくてすんだのです。

 生前に対処するだけで、大幅な節税ができる例はとても多いものです。「離婚」「再婚」歴がある方は、注意が必要です。

 次回の掲載は6/27です。

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