「いつも、考えすぎて損してばかり!!」
日本人は礼儀正しくて、とても優秀……なのに、日々必要以上に思い悩んでいないだろうか?
“究極の合理思考”を身につければ、もっと楽しくラクになる」――。数十億規模の案件に関わり、インド人部下オペレーションを経験したインド麦茶氏は、「常に自分中心」「短期志向」「無計画で今を生きている」ように見える彼らに「日本人が幸せを謳歌するための“ヒント”」を見出したという。
新刊『インド人は悩まない』では、人口14億・上位1%が富の40%以上を所有する超競争・過密・格差社会を生き抜く人々の「規格外の行動力」と「抜け目なさ」の秘密を紹介している。今回はその魅力の中から一部をお届けする。(構成/ダイヤモンド社・榛村光哲)

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インド民の徹底した実利主義」

インドのGDPがいよいよ日本を抜き去ろうとしている。14億人も人口がいるのだから、自然なことかもしれないが、これまで4位を維持してきた我が国日本が、途上国だと思ってきた国にその座を明け渡すのは事実だ。

「インド」と聞いた時、大体の日本人が想像するのは、経済大国のイメージではなく、カオスのような雑踏と、不衛生な環境だ。そのイメージは依然として正しい。ただ、経済成長という面からインドの人々を見ると、現代日本人がどうしてもかなわない点も見えてくる。

その一つが、「徹底した実利主義」である。

規格外の「手を抜く」「任せる」メリハリ

では、「徹底した実利主義」とは何か。

インド民は目に見える便益にフォーカスし、余分なことについては、手を抜く・誰かに任せることを徹底できるメンタリティがある。儲かることにリソースを集中させ、それ以外への無配慮・無遠慮が規格外なのだ。このような彼らのメンタリティは経済の拡大局面では、強みを発揮する。

具体的なことを言えば、生産量増加のための設備投資、売上を上げるためのなりふり構わないセールス、それらを実現するためのアグレッシブな資金調達、こういった供給力に直結する基本的な取り組みに全力投球し、枝葉の企業活動は随分とテキトーにこなしても、なんとも思っていない様子が現地では垣間見える。

オフィスは簡素でも「人に見えるところ」は豪華

逆に、日本の旧態依然とした大企業の中で行われている日々の仕事を見ると不安になる。二、三人の目にしか触れない資料を何日もかけて作成したり、生産能力に間接的にしか寄与しない研修に時間を割いたり、「あったらいいな」程度の機能の開発に工数をかけたり。このような供給力に直接寄与しない仕事を仕事っぽくやっている。さらに痛いことを言えば、社内の様々な部署のコンセンサスや納得感を得るために何回も会議を開いたり、社会への配慮の名のもとに、サステナビリティ対策やCSRなどと言った「輸入された横文字」の活動に精を出している。

インド民は実利に関係のないことがほんとに嫌いだ。

インドの地場の企業に訪問すると、オフィスエリアは意外に簡素で、華美な結婚式や自宅の装飾が大好きなインド民の会社とは思えないほど金がかかっていない。こういうところは財布の紐がめっぽう固い。

「速すぎて無遠慮な意思決定」

意思決定の速さも経済の拡大に繋がっている。他者に対する配慮や遠慮がなく、非常に大胆だ。決定権がある機関や部署が、ものごとをどんどん決めていく。もちろんそれなりの相談や確認はするのだが、最後に相手に「納得」してもらうようなことを重視せず、自らの決定権のあることを進めていく。

モディ首相が2016年、2023年に実施した高額紙幣の廃止や新紙幣への移管はその代表例だ。これによって多少なりとも混乱や不便は起こったが、結果的に経済全体に対して良い影響となる施策がスピード感を持って実行できた。こういった意思決定の速さと、ある種の無遠慮さが、供給力の急速な増加に繋がっている。

日本人が忘れた「推進力」の正体

私も、赴任した最初の頃はインド民のことを、「困った奴ら」だと思っていたが、物事が決まっていく圧倒的な速さと、どんどん増えていく周囲のオフィスビルを見て、彼らの行動力と人生を前に進めていく推進力には、日本人が忘れてしまったものがいっぱい詰まっていると感じた。

このようにインド民の生活や生き方から、日々「考えすぎ」て、自分の人生を生きられていない日本人こそが学ぶべきメンタリティや技術を『インド人は悩まない』で解説している。これまであなたが見たことがない彼らの社会を覗いてみると、きっと新しい扉が開くはずだ。

(本記事は『インド人は悩まない』の一部を抜粋・調整・加筆した原稿です)