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欧州連合(EU)が5日、米実業家イーロン・マスク氏率いるX(旧ツイッター)に制裁金を科したことで、ある疑問が生じている。それは「一体何を考えているのか」というものだ。EUにおいてさえ、一つの政策措置がこれほど多くの経済的な自己破壊と外交的損失を一度に引き起こすのはまれだ。
今回の1億2000万ユーロ(約217億円)の制裁金は、EUのデジタルサービス法(DSA)に違反したことに対するものだ。2022年のDSA発効以来、EUがこうした形で同法を執行したのは初めて。オンライン規制を担当する欧州委員たちは、違反行為とされるものを幾つか挙げている。最もばかげた主張は、「認証」を示す青いチェックマークを販売するXのシステムが、「利用者がアカウントの真正性や、自分たちがやりとりするコンテンツの信頼性について、自由で情報に基づいた判断をする能力に悪影響を及ぼす」とするものだ。
さらに深刻なのは、EUがXに対し、Xの広告関連データを外部の人が容易に利用できるようにすることを求めるとともに、「適格な研究者」によるデータスクレイピング(自動抽出)を利用規約で禁止すべきではないと主張していることだ。EUは、研究者や「市民社会」が詐欺や情報操作を特定できるようにするために、Xの広告データへのこうしたオープンアクセスが不可欠だと訴えている。
この「市民社会」への言及が核心だ。EUはX(と必然的に他のプラットフォーム)にデータを共有させることを望んでいるが、これらのデータは、今後の規制措置や訴訟において、敵意を持った活動家がこれらのプラットフォームに対抗する材料として使う可能性がある。これは全て、欧州の市民は愚かなためXなどのネット情報をうのみにしてしまうという理論が前提になっている。







