「20年先、30年先も安心して暮らせる住まいを選びたい」と願うなら、これだけは知っておきたい基礎知識シリーズ。指南役は一級建築士で不動産鑑定士、不動産コンサルタントとしても活躍している田村誠邦氏だ。今回は災害だけでなく、人口減少社会にも着目した「立地」の選び方を紹介する。

縮小する都市
行政サービスに危機

田村誠邦 たむら・まさくに
1954年生まれ。東京大学工学部建築学科卒。建築再生やマンション建替えなど各種建築プロジェクトのコンサルタントとして活躍。アークブレイン代表取締役。明治大学理工学部特任教授、博士(工学)。不動産鑑定士。一級建築士。2008年日本建築学会賞(業績)受賞。

「立地選びに新たな視点が浮上しています」と田村誠邦氏。「将来にわたって、行政サービスや都市インフラが維持できる立地か」という視点だ。

「人口は減少し続けていきます。全国津々浦々に行政サービスが行き届いたのは過去の話。都市計画の専門家の間では、今や『都市のたたみ方』が中心テーマです。残酷なようですが、今後、人口が急減するようなエリアは、福祉や医療、防犯防災などの行政サービスが行き届かなくなる可能性も……。こうしたエリアは老後の暮らしが心配です」

 自治体の財政悪化も目に付く。この先、道路や橋、上下水道などの都市インフラが一気に老朽化し、補修もままならない自治体が急増しそうだ。限られた予算は人口が集中する市街地にまわされ、郊外や過疎地は取り残される可能性も高い。

「中核都市は別としても、例えば首都圏なら50キロ圏外、国道16号線より外側は衰退リスクが高い」という。

建売住宅は地盤や
土地の素性をチェック

 もちろん、リスクを承知のうえで遠方を選ぶのはかまわない。ただ、「将来、買い替えればいい」という考えは甘い。衰退が明らかになれば買い手も減り、価格は予想以上に落ちるだろう。

 東日本大震災では、液状化現象で戸建てやインフラに重大な被害が出た。建物の耐震性が高くても地盤が軟弱だったり、液状化したり、地崩れを起こしたりすれば被害を免れない。たとえ自宅が無事でもインフラがダメになれば生活に支障が出るし、資産価値も下がる。

 地盤改良は可能だが、「建てた後」からの改良は難しく、インフラの復旧には時間がかかる。ここでも「自治体力」が問われる。

 また、マンションの場合は深い地中まで杭を打って建てるので比較的安心だが、「特に建売住宅は十分な地盤チェックを」と田村氏は注意を促す。古くから住んでいた土地や、新しい土地でも地盤を吟味して建てるのとは違い、建売住宅は土地の素性や造成の状態などを確認しにくい。ユーザーも建物ばかりに目がいきやすいからだ。

 では、地盤のよしあしをどうやって調べればいいのか。