「もっと稼がなきゃ、幸せになれない」――多くの人がそう信じている。しかし世界的ベストセラー『アート・オブ・スペンディングマネー 1度きりの人生で「お金」をどう使うべきか?』は、その思い込みを鮮やかに覆す。もちろん、収入を増やすことは大切だが、いくら収入が増えても幸せになれない人もいるのだという。お金を増やすことと同じくらい、私たちの幸福度に影響することとは何か?(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

「年収が上がっても幸せになれない人」のざんねんな特徴Photo: Adobe Stock

「豊かさ」=「持っているもの」-「欲しいもの」

もっとお金を稼がなければ幸せになれない――そんな焦りを抱える人は少なくない。私たちはいつの間にか、“お金は多いほど豊かになれる”と信じてしまっている。

しかし、世界的ベストセラー『アート・オブ・スペンディングマネー』は、この常識を覆す。同書ではまず、こう指摘されている。

豊かさとは、「何を持っているか」ではない。本当に重要なのは、「持っているもの」と「欲しいもの」との差なのだ。
――『アート・オブ・スペンディングマネー』より

一見シンプルだが、この一文はお金の本質を鋭く突いている。収入や資産がどれほど増えても、欲望が同じスピードで膨らめば、幸福度はほとんど変わらない。反対に、欲望の方を調整すれば、たとえ資産が少なくても満足度を大きく高めることができる。

欲望が増え続ける人は、収入が増えても満たされない

著者はさらに、次のように述べている。

欲望を減らすことは、お金を増やすことと同じくらい、私たちの幸福度に影響する。しかも、これは自分でコントロールできることだ。そのうえ、「勝てるゲーム」でもある。
――『アート・オブ・スペンディングマネー』より

収入アップは環境や運にも左右される。しかし、“欲望との付き合い方”だけは、誰もが今日から変えることができる。

そしてこの考え方は、現代のお金の悩みがなぜ深刻化するのかも説明してくれる。

SNSで誰かの成功や買ったモノ、海外旅行を見て羨ましがり、不安になる。こうした外部の刺激が、私たちの「欲しいもの」を無意識に増やしていく。結果として、“満たされない感覚”だけが積み上がっていく。

だが、少し考え方を変えれば、豊かさは一瞬で姿を変える。「足りないもの」に意識を向けるのをやめ、“欲望を膨らませる刺激”に触れる機会を減らすだけで、人生の満足度は驚くほど変わる。

豊かさとは、“持っているものと、欲しいものの差”である。この視点を持つことが、収入に左右されずに人生を幸福に導くカギなのかもしれない。

(本原稿は、『アート・オブ・スペンディングマネー 1度きりの人生で「お金」をどう使うべきか?』(モーガン・ハウセル著・児島修訳)に関連した書き下ろし記事です)