【沈黙が正解】会議で手応えを感じたら、もう話さないほうがいい
戦略コンサルやシリコンバレーの経営者、MBAホルダーには、共通点があった。「伝える内容を1つに絞り、1メッセージで伝えて、人を動かす」ということ。プレゼン・会議・資料作成・面接・フィードバックなど幅広い場面で成果を上げるノウハウをまとめた書籍『1メッセージ 究極にシンプルな伝え方』から一部抜粋して紹介する。
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会議で手応えを感じたときにどうするか
思っていたよりも自分の言ったことが相手やまわりに刺さる。そのように、会議で手応えを感じるときがある。しかし、恐ろしいのは、会議ではそのような手応えを感じたときほど、全てを台無しにするようなNG行動をとってしまったりすることだ。
わたしが会議で手応えを感じたときにやってしまったこと
駆け出しの戦略コンサルタントだったときの話だ。まだコンサルタントになったばかりのわたしは、入ったプロジェクトで苦しんでいた。たいして中身があることを言えていなかった。
しかし、そんなときに、ある会議でたまたま自分が発した一言が相手に刺さったように感じた。なんだか相手の役に立てたようで、そして、自分がコンサルタントとして認められたようで嬉しくなった。
そこで、わたしの先ほどの一言を噛みしめてくれているクライアントの役員に対して、手応えを感じていたわたしは調子に乗って自分の考えをついでにいろいろと話した。いろいろと考え、いろいろと分析したので、いろいろと伝えたいことがあったから。
そうしてわたしが話していくと、クライアントの役員はどんどんと難しい顔になっていった。会議はそのまま終わった。いろいろなことを考えているから相手は難しい顔になっているのかな程度にしかわたしは気が回っていなかった。
「自分で全てを台無しにしてしまった」というダメ出し
その帰り道のことだ。同行していたシニアコンサルタントから、わたしはダメ出しを受けた。
「杉野さん、調子に乗ったね。せっかく一言が刺さっていたのに、その後にいろいろと言ってしまって、自分で全てを台無しにしてしまった」
わたしは瞬時には意味がわからなかったが、その後に告げられたことを理解し、ただただ後悔することになった。
会議で手応えを感じても、いろいろと言ってはいけない
シニアコンサルタントは、わたしにこう告げた。
「最初に刺さった一言と、それから続けていったいろいろなことは、一部は関係があるが一部は関係がない。せっかく刺さるようなことを言ってくれた杉野さんの言葉だからとクライアントは耳を傾けてくれたが、それによってその一部の関係のないことまで相手は聞かされてしまって、相手は話の全体像を見失ってしまったと思う」
わたしは手応えを感じていろいろと言ったことで、せっかく最初の一言が刺さっていたのに、自分で全てを台無しにしてしまったことを理解した。顔が真っ赤になった。
そして、シニアコンサルタントは、さらに言葉を足した。
「杉野さんにとっては伝えたいことでも、相手にとっては関係のないことや興味のないことはノイズだから」
顔を真っ赤にしていたわたしの背筋が凍った。手応えを感じて調子に乗っていたという自覚がある分、痛恨の極みだった。
このため、その強烈な失敗体験をバネにして、そのクライアントとの次の会議に臨んだ。自分の伝えたことが相手に刺さったときでも、ついでにと自分の伝えたいことをいろいろと言うのではなく、その刺さったことに関係することに絞って補足するようにした。そして、相手が考えてくれているときには、いろいろと伝えたいことがあっても、あえて沈黙することを選んだ。今度の会議は最後まで上手くいき、わたしにとっては前回の失敗を挽回できただけではなく、大きな学びを得た会議になった。
自分の伝えたいことのほとんどは相手にとって「ノイズ」だと自覚し、一つに絞って伝えよう
多くの場面で、自分がいろいろと伝えたいほどに、相手はいろいろと聞きたいわけではない。そんな中で、いろいろと伝えてしまうと、相手にはノイズになる。そのような自分が発したノイズは、自分がそれまでに発した全てを相手にとって理解不能にしてしまい、全てを台無しにしてしまったりする。
会議で手応えを感じられるのは素晴らしいことだ。しかし、そのような場面でも、調子に乗って自分の伝えたいことをいろいろと言うのではなく、相手が一番聞きたいこと一つに絞って伝えよう。相手が考えてくれていて、こちらから補足することがもうなければ、沈黙するのがよい。そうすることで、上手くいっている会議がさらに上手くいくようになるはずだ。
手応えを感じているときほど調子に乗っていろいろと言いたくなるが、我慢しよう。結局は、一つに絞るのが一番伝わるからだ。
(本原稿は『1メッセージ 究極にシンプルな伝え方』を一部抜粋・加筆したものです)









