オラクルに付きまとう「オープンAIの影」Photo:Bloomberg/gettyimages

 企業向けソフトウエアを50年にわたり販売してきた米オラクルは、多数の大口顧客を獲得してきた。しかし、たった1社の顧客にその命運をこれほどまで握られたことは、かつてなかった。

 オラクルが米オープンAIに3000億ドル(約47兆円)相当の人工知能(AI)コンピューティングサービスを提供する契約を結んだことが明らかになってからの3カ月間に、多くのことが起きた。これは、オープンAIが締結した一連の高額契約の一つに過ぎない。対話型AI「チャットGPT」を手掛ける同社の現在の年間売上高は200億ドル未満だ。

 これらの契約を裏付けるオープンAIの積極的な成長期待は、米グーグルが先月、最新のチャットGPTをベンチマークテストで上回る強力な「Gemini(ジェミニ)3」を発表したこともあり、一段と野心的に見える。この発表を受け、オープンAIの経営陣は社内で「コードレッド(非常事態)」宣言を余儀なくされた。

 オープンAIは非公開企業であるため、投資家は同社へのエクスポージャーが大きい他の企業の株式を売却することで反応している。そして、オラクルほど厳しい打撃を受けた企業はほとんどない。10日の9-11月期(第2四半期)決算発表を前に、同社株は過去3カ月間で32%安と急落していた。ファクトセットによると、この期間のS&P500種指数構成銘柄の下落率としては3番目に大きかった。これは、AIコンピューティングによって今後数年間で事業規模が2倍になるという前提で時価総額が1兆ドルに近づいていたオラクルにとって、特に厳しい展開だ。