【丸暗記では落ちる】7回落ちた受験生が合格できた「たった1つの変化」とは?
働きながら独学で3年、9つの資格に合格! 大量に覚えて絶対忘れないコツとは?
著者は棚田健大郎さん。1年間必死に勉強したのに宅建に落ちた経験をきっかけに、「勉強が苦手な人でも続けられる方法を作ろう」と決意。棚田さんの勉強法をまとめた『大量に覚えて絶対忘れない「紙1枚」勉強法』の刊行を記念して、本記事をお届けします。

【丸暗記では落ちる】7回落ちた受験生が合格できた「たった1つの変化」とは?Photo: Adobe Stock

7回落ちた受験生が合格できた「たった1つの変化」とは?

 宅建の勉強をしていると、「過去問をひたすら回せば何とかなる」と思いがちですが、宅建は過去問の丸暗記だけでは通用しない試験です。同じやり方を続けている限り、毎年ほぼ同じ点数で伸び悩む、ということが普通に起こります。

 実際にこんな受験生がいました。昨年、後輩が宅建に合格したことをきっかけに私のチャンネルを知り、今年1月から耳学をスタート。今年7回目のチャレンジでついに合格されました。それまでの「過去問をとりあえず周回して丸暗記」というやり方をやめ、問題集とYouTubeで周辺知識まで何度も回しながら、「夢は必ず叶う」を口癖に勉強を継続したそうです。これは才能ではなく、「勉強法を変えた結果」だと私は見ています。

 丸暗記で頑張っている人の試験中の感覚はだいたい同じです。「これやった問題だ。テキストにも過去問にもあった。でも、正解はどっちだったっけ……」。記憶はあるのに、細かい違いを問われた瞬間に手が止まる。この「覚えたはずなのに正確に出てこない」という状態が、過去問丸暗記の限界です。知識自体は入っているのに、必要なときに取り出せない。つまり「収納はしているけれど整理されていない」状態です。

 ここでイメージしてほしいのが「タンス」の例です。あなたの頭の中に大きなタンスがあるとします。丸暗記タイプの人のタンスには、服=知識がとにかくぎゅうぎゅうに詰め込まれています。量はあるけれど、どこに何をしまったか自分でも分からない。必要な服を探そうとしても、あちこちの引き出しを開けても見つからず、部屋はぐちゃぐちゃ。試験中の頭の中ではまさにこれが起きています。

 一方、理解している人のタンスは、同じくらい服が入っているように見えて、中身がきちんと整理されています。シャツはシャツの引き出し、ズボンはズボンの引き出し、季節ごと・用途ごとに分かれていて、必要なときにさっと取り出せる。これが「丸暗記ではなく、整理された知識」を持っている状態です。試験本番で初めて見る聞かれ方をしても、「あ、この引き出しだな」と関連する場所を自然に開けて、そこから知識を取り出せる人が合格していきます。

 では、自分の頭の中を「整理されたタンス」に近づけるにはどうすればいいか。そのための最強の勉強習慣を一つだけお伝えします。勉強を始める前に、必ず自分に問いかけてください。「自分はいま、どこの、何の勉強をするのか?」と。これを強く意識してからスタートすることです。

「宅建業法をやる」「権利関係をやる」というレベルではまだざっくりしすぎています。「宅建業法のうち、宅建免許の欠格事由をやるのか」「宅建士の欠格要件をやるのか」。似ているけれど別物のテーマを、どこまで具体的に切り分けて意識できるかが決定的に重要です。

 これは子どもの勉強でも同じで、小学生に「いま何を勉強しているの?」と聞いたとき、「算数」「国語」とだけ答える子より、「かけ算の3の段をやっている」と答えられる子のほうがテストの点が安定していると言われます。「いま自分は何を学んでいるのか」を具体的に認識できると、覚えたことが整理されて残りやすいからです。

 宅建でも同様で、「今日は宅建業法をやろう」くらいの意識だと、頭の中では「免許」「登録」「宅建士」「営業保証金」「保証協会」など似たキーワードが全部ごちゃ混ぜになります。本来なら別々の引き出しに入れるべき知識を、同じ場所に押し込み続けているので、後から「前に習った気がするけど、どっちだったっけ」と迷うのです。

 たとえば問題集で「宅建免許の欠格事由」のページをやると決めたら、解き始める前の数秒でかまいません。「いまから自分は宅建免許の欠格事由を頭に入れる」とはっきり意識します。そのうえで、頭の中に「宅建免許の欠格事由」という引き出しをイメージし、その引き出しにだけ知識を入れていく感覚で解いていきます。そうすれば、後日「宅建士の欠格要件」をやるときも別の引き出しとして区別しやすくなり、取り違えが減ります。

 逆に、この意識を持たないまま、なんとなくテキストや問題集を開くと、すべてが「宅建業法のどこか」という曖昧なラベルで頭に入ってしまいます。これはタンスのどの段かも考えず、空いているところに服を押し込んでいる状態です。詰め込んでいるときは「勉強した気」になりますが、必要になったとき必ず困ります。

 宅建は、免許と登録、宅建免許と宅建士、営業保証金と保証協会など、似ている知識のオンパレードです。その「ちょっとした違い」が合否を分けます。だからこそ、「覚える瞬間にどの引き出しに入れるかを意識する」ことが必須です。これはセンスではなく、ただの習慣です。

 丸暗記から卒業するための最強勉強法はシンプルです。勉強を始める前の数秒で「自分はいま、どこの、何を勉強するのか」を言葉にしてから始めること。そして頭の中で正しい引き出しを開け、その中に知識を置いていくこと。今日からぜひ、タンスのイメージを思い浮かべながら、本物の勉強に切り替えていってください。これが、丸暗記から抜け出すための、いちばん確実な方法です。

(本原稿は、『大量に覚えて絶対忘れない「紙1枚」勉強法』の一部抜粋・加筆したものです)