「うちの子、語彙が少ないのでは?」「自分の意見をちゃんと言えない」‥‥‥。スマホやSNSの普及により、子どもの「言葉にする力」の衰えを危惧する声が増えています。そんな中、『「うまく言葉にできない」がなくなる 言語化大全』(ダイヤモンド社)等のべストセラーで知られる文章の専門家・山口拓朗氏が、待望のこども版『12歳までに身につけたい「ことば」にする力 こども言語化大全』(ダイヤモンド社)を上梓しました。同書は、マンガと「言葉を使ったゲーム」を通じて、子ども(小学校低学年~高学年)が楽しく言語化能力を身につけられる画期的な一冊です。本連載では、本書をベースに親御さん向けの記事として抜粋・編集した記事や、著者による書き下ろし記事で、「子どもの言語化力」を高める秘密を紐解いていきます。

【要注意】子どもから“言葉”を奪う親の何気ない一言とは?Photo: Adobe Stock

何気ない指摘に要注意!

「もっとちゃんと話しなさい」
「なんでそんなこと言うの?」
「そんな作文じゃ恥ずかしいでしょ」
「どうして、○○ちゃんのように、うまく書けないの?」

 子どもが話したり書いたりした内容に対して、ついこんな言葉をかけていませんか? こうした何気ない指摘が、子どもの「言語化する力」を奪ってしまうことがあります。

 言語化力とは、自分の気持ちや考え、体験を「言葉」にして外に出す力のこと。言語化力には、作文のような「書く表現」だけでなく、日常会話の中での「話す表現」も含まれます。

 子どもの言語化力を伸ばすうえで欠かせないのが、「何を言っても受け止めてもらえる」という安心感です。

 たとえば、子どもが「今日の学校、つまんなかった」と言ったとき、「そんなこと言っちゃダメでしょ」「もっと楽しいことを言いなさい」などと返してしまうと、子どもは「本音を話すと否定される」と感じ、言葉にすることを避けるようになってしまいます。

 作文でも同じです。たとえ数行でも、そこに子どもなりの思いがあるのに、「たったこれだけ?」「もっとちゃんと書いて!」「こんな作文じゃおかしいでしょ?」と否定されると、「認められなくて悲しい」「私なんて、どうせダメ」「自分は作文がヘタ」と思い込んでしまうようになります。

無条件で受け止め、「深掘り」する

 では、どうすれば子どもの言語化力を伸ばすことができるのでしょうか?
 まず大切なのは、子どもが話したり書いたりした内容を、親や大人が無条件で受け止めることです。

 子どもには、正しさやうまさを基準とする評価ではなく、「その子自身の中から出てきた言葉(=気持ちや考え)」を認めてあげることが大切なのです。

 たとえば、子どもが「今日の給食、まずかった」と言ったなら、「そんなこと言わないの!」ではなく、「へえ、そうだったんだね」と受け止め、「何がおいしくなかったの?」と深掘りするように問い返してみてください。

 もちろん、「書く力」も同じです。子どもが書いた作文の良し悪しをジャッジするのではなく、「よく書けたね」「正直な気持ちを書いてくれてうれしいよ」と伝えることで、「受け止めてもらえて嬉しい」「言葉にするのって楽しい」「もっと言葉にしたい!」という気持ちが芽生えていきます。

 こうして言語化の機会を少しずつ増やしていくことで、その子の自己肯定感や自己効力感は自然と高まっていきます。「自分の気持ちや考えを言ってもいいんだ」「自分の言葉には価値がある」と感じられるようになれば、子どもは自然と「話すこと」や「書くこと」に前向きになります。その自信は、そのまま人間関係に対する自信や、生きることへの自信へと広がっていきます。

 一方、否定的な声がけが続くと、「言っても仕方がない」「どうせまた怒られるだけ」「好きに書けないから、おもしろくない」と感じてしまい、話すことや書くことへの興味やモチベーションが下がります。これはとてももったいないことであり、また恐ろしいことでもあります。

 言語化力は、技術だけで育つものではありません。「どう言うか」以前に、「言ってもいいんだ」という安心がなければ、言葉に出すことにためらいを感じやすくなります。日常における、親や大人の声がけが、子どもの言語化力、ひいては、その未来を決めると言っても過言ではありません。まずは、子どもの言葉を否定せず、受け入れることから始めてみませんか?

 *本記事は、『12歳までに身につけたい「ことば」にする力 こども言語化大全』(ダイヤモンド社刊)の著者山口拓朗氏による書き下ろしです。