「うちの子、語彙が少ないのでは?」「自分の意見をちゃんと言えない」‥‥‥。スマホやSNSの普及により、子どもの「言葉にする力」の衰えを危惧する声が増えています。そんな中、『「うまく言葉にできない」がなくなる 言語化大全』(ダイヤモンド社)等のべストセラーで知られる文章の専門家・山口拓朗氏が、待望のこども版『12歳までに身につけたい「ことば」にする力 こども言語化大全』(ダイヤモンド社)を上梓しました。同書は、マンガと「言葉を使ったゲーム」を通じて、子ども(小学校低学年~高学年)が楽しく言語化能力を身につけられる画期的な一冊です。本連載では、本書をベースに親御さん向けの記事として編集・書き下ろしし、「子どもの言語化力」を高める秘密を紐解いていきます。
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「言語化力は成長すれば自然と伸びる」は勘違い
多くのアナログ世代の親たちは、「子どもの言語化能力は、普通に過ごしていれば年齢とともに自然に伸びていく」と考えています。
しかし、これは現代において「大きな間違いであり、勘違い」です。
今の時代、子どもの周りには言語化能力の成長を阻害する要因が溢れています。
タブレットやスマートフォンへの依存、そしてコミュニケーション量の絶対的な低下です。
ただ漫然と過ごしているだけでは、大人になるにつれて言語化力が伸びていくどころか、むしろ停滞してしまうのが現実なのです。
子どもの脳は「疲れ切っている」
なぜここまで言語化力が落ちているのか。その最大の要因として挙げられるのが「スマホ依存」による脳疲労でしょう。
大人は仕事で疲れた時、「ちょっと休もう」とスマホを手に取ります。しかし、一部の研究では、スマホを見ている間、脳の「前頭前野」の機能が低下傾向になることがわかっています。通知やSNSによる刺激でドーパミンが過剰に分泌される一方、思考や判断、自制を担う前頭前野の血流は下がり、理性のブレーキが利きにくくなるのです。
これは子どもも同様です。
学校から帰って、寝る直前まで動画やスマホゲームに没頭する。
これでは脳が休まる暇がありません。その結果、脳が慢性的な疲労状態に陥り、集中力や記憶力を含む認知力、さらに感情のコントロール力や対人面の働きにまで影響が及ぶと指摘されています。
コロナ禍が追い打ちをかけた「コミュ力不足」
さらに深刻なのが、コロナ禍の影響です。黙食やマスク生活を強いられ、「なるべく人と話さない」ことが良しとされた期間を過ごした子どもたちは、圧倒的にコミュニケーションの経験値が不足しています。
実際、私が担当する企業の新人研修でも、自分の意見を言えない、電話に出るのが怖いといった「言語化できない若者」が増えています。彼らはコロナ禍を学生として過ごした世代ですが、当時、幼稚園や小学生だった子どもたちが社会に出る数年後、この傾向はさらに強まっている可能性があります。
意識的に「言葉を使う場」を作らなければ、子どもの脳と言葉は守れない時代に来ているのです。
*本記事は、山口拓朗著『12歳までに身につけたい「ことば」にする力 こども言語化大全』(ダイヤモンド社刊)の「保護者向け はじめに」に大幅に加筆し、編集したものです。






