「いきなり評価が上がる人」のたった1つの習慣とは?
戦略コンサルやシリコンバレーの経営者、MBAホルダーには、共通点があった。「伝える内容を1つに絞り、1メッセージで伝えて、人を動かす」ということ。プレゼン・会議・資料作成・面接・フィードバックなど幅広い場面で成果を上げるノウハウをまとめた書籍『1メッセージ 究極にシンプルな伝え方』から一部抜粋して紹介する。

「いきなり評価が上がる人」のたった1つの習慣とは?Photo: Adobe Stock

「いきなり評価が上がる人」がしている習慣がある

 会議、面接、謝罪、プレゼンなどでは、発言によってその人の評価が変わるような大事な一瞬があったりする。そのような大事な一瞬での発言で「評価を下げる人」ほど使っておらず、その発言で「いきなり評価が上がる人」ほど使っている言葉がある。

発言で「評価を下げる人」ほど「固有名詞」を使っていない

 大事な一瞬での発言で「評価を下げる人」ほど使っていない言葉とは、「固有名詞」だ。

 固有名詞は名詞の一種で、一つひとつの物事に与えられる特有の名称だ。たとえば、東京、山本さん、富士山みたいなものだ。それと対比的なのが普通名詞で、同じ種類の物事に共通して使われる名称だ。たとえば、大都市、男性、山みたいなものだ。

エレベーターで遭遇した役員から「休みはどうしていた?」と聞かれたらどう答えるか?

 たとえば、会社でエレベーターに入ってきた役員から挨拶がてらに「休みはどうしていた?」と聞かれたときの次のような会話が典型だ。

「小説を読んだりしていました」

 日本語として、なにも間違っていない。しかし、これではすぐには会話は弾まない。「小説」のような普通名詞はその定義のとおり、さまざまな物事に共通して使える分、具体的になにか一つの物事を相手に伝えられない。結果として、言われた相手は解釈に迷って具体的にイメージするのに負荷がかかってしまうのだ。

 このため、言われた相手は億劫になり、イメージするのを止めて「読書家だね」と愛想のよい返しはするが、沈黙が訪れたりする。エレベーターの中などの時間が限られた一瞬だと、そのまま会話は終わるだろう。そして、場合によっては、「なんか会話が弾まない人」と評価されてしまったりもする。

発言で「いきなり評価が上がる人」ほど「固有名詞」を使っている

 一方で、大事な一瞬での発言によって「いきなり評価が上がる人」はどんどんと「固有名詞」を会話の中で使う。たとえば、先ほどのようにエレベーターの中で「休みはどうしていた?」と聞かれたときにはこう返したりする。

「伊坂幸太郎さんの『終末のフール』を読んだりしていました」

 こうして固有名詞を使って言われた相手は、解釈で迷うことがない。一瞬でイメージがわく。それは仮に「伊坂幸太郎さん」や「終末のフール」を知らない人であったとしても「それってどんな小説なの?」と会話が一歩進む。そして、「伊坂幸太郎さん」や「終末のフール」を知っている人からすると「わかる!」とか「あの場面が好き」などと、話が盛り上がり、気持ちよく「好印象」でエレベーターを降りていくだろう。

なぜ「評価を下げる人」ほど固有名詞を使わず、「評価を上げる人」ほど固有名詞を使うのか?

 では、なぜ「評価を下げる人」ほど固有名詞を使わないのだろうか。そして、なぜ「評価を上げる人」ほど固有名詞を使うのだろうか。

 理由は、固有名詞は「生々しい言葉」だからだ。生々しい言葉とは、伝えられた相手にとって解釈に迷うことがない一瞬でイメージが沸く言葉だ。

 仕事ができない人は、リスクを必要以上に怖がり、成功することよりも失敗しないことを目指しがちだ。このため、一瞬でイメージが伝わることでの失敗を恐れ、一歩ずつ相手の様子を見ながら徐々に伝えようとして「普通名詞」を使いたがる。結果として、相手に解釈の負荷をかけてしまい、それは時間が限られた大事な一瞬での発言としては致命的になり、「評価を下げる人」になってしまう。

 一方で、仕事ができる人は、リスクを怖がらず、失敗しないことよりも成功することを目指す人が多い。結果として、スタンスを取り、一瞬でイメージが相手に伝わるように「生々しい言葉」である「固有名詞」を使う。結果として、相手に一瞬で生々しく伝わり、相手との距離を一瞬で縮め、相手との会話を弾ませていって一瞬で「いきなり評価が上がる人」となっていく。

大事な一瞬では、迷ったら「固有名詞」を使おう

 もっと言うと、仕事ができない人は相手のために発言するのではなく、自分を守るために発言していて、このために普通名詞を使う。一方で、仕事ができる人は自分を守るために発言するのではなく、相手のために発言をしていて、このために相手に伝わりやすい固有名詞を使う。自分のために話す人、相手のために話す人。どちらが相手から評価されるかは言うまでもないだろう。

 大事な一瞬では、迷ったら「固有名詞」を使って伝えよう。たかが言葉選びだが、それによって、相手への伝わり方、相手への印象、相手からの評価が変わったりするものなのだ。

(本原稿は『1メッセージ 究極にシンプルな伝え方』を一部抜粋・加筆したものです)