【一発アウト】税務署が激怒する「孫の通帳」のNG行動
本連載は、相続に関する法律や税金の基本から、相続争いの裁判例、税務調査で見られるポイントを学ぶものです。著者は相続専門税理士の橘慶太氏で、相談実績は5000人超。『ぶっちゃけ相続【増補改訂版】』を出版し、遺言書、相続税・贈与税、不動産、税務調査、各種手続といった観点から相続の現実を伝えています。2024年から始まった「贈与税の新ルール」等、相続の最新トレンドを聞きました。

【一発アウト】税務署が激怒する「孫の通帳」のNG行動とは?Photo: Adobe Stock

【一発アウト】税務署が激怒する「孫の通帳」のNG行動

 本日は「生前贈与と税務署」についてお話しします。年末年始、相続について家族で話し合う際、ぜひ参考にしてください。

「生前贈与はしたいけれど、お金を今すぐ子供や孫に渡したくない」という矛盾したお気持ちを持たれる方も多くいます。

 これは「生前贈与で相続税の節税はしたいけど、若い子や孫に大金を渡してしまうと金銭感覚が狂ってしまうのでまだ渡したくない」というジレンマから生じています。ただやはり、「節税はしたいけれど、今すぐあげたくない」という良いとこどりは認められません。

「一石三鳥のすごいノウハウ」とは?

 このジレンマを解消する方法として、生前贈与でもらったお金で、生命保険に加入させる方法があります。例えば、祖父から孫に110万円の贈与を検討しているとします。孫はまだ20歳と若いので、大金を持たせるのは教育上よくありません。そこで、祖父は、知り合いの保険会社に相談し、孫に「これから毎年110万円を生前贈与するから、おじいちゃんが用意したこの生命保険に加入し、贈与したお金から毎月9万円の保険料(年間108万円)を払い続けなさい」と伝えます。

 孫はそのことを了解し、生命保険の契約書にサインします。祖父は孫の通帳にお金を振り込み、そのお金は保険料として保険会社に払い込まれました。この方法であれば、孫がお金を使った実績を残すことができ、かつ、孫の使い込みも防止できます。節税と税務調査対策と無駄遣い防止の「一石三鳥の対策」としてオススメです。

 ちなみに、保険料の設定は自由で、贈与でもらったお金の全額を保険料に充てなくてもOKです。保険のタイプは掛け捨てではなく、将来、支払った保険料よりも大きく増えて戻ってくるものがオススメです。

税務署が激怒する「NG行動」とは?

 しかしこの対策も、近年、形だけを真似する方が増え、トラブルが散見されるようになりました。具体的には、子や孫に生命保険の契約書にサインだけさせて、実際の保険料の支払いは親や祖父母が保険会社へ直接、子や孫の代わりに行っているケースです。

 この対策は①祖父母(父母)から孫(子)にきちんと生前贈与ができており、②孫(子)が自分の意思で保険料を払うことで成立します。

 一方で、①祖父母(父母)と孫(子)の間で生前贈与ができていたように見せかけ、②祖父母(父母)が孫(子)の保険料を負担していたなら、それは大問題です。生前贈与はできていなかったものとして、祖父が孫の代わりに払っていた生命保険も、祖父が死亡したときの相続税の対象になります(これを名義保険といいます)。

このパターンに注意!

 名義保険が発生するパターンは、だいたい決まっています。

①保険会社の営業職員立ち会いのもと、親が子に生命保険の契約書にサインをさせる(子はわけがわからないままサインする)※契約者:子 被保険者:親 受取人:子

②親が子名義の通帳を預かり、毎年、親の通帳から子名義の通帳にお金を振り込む(子名義の通帳は親が管理)

③毎年、子名義の通帳から保険会社へ保険料を支払う

 この流れで保険料を払っていた場合、満期保険金を子が受け取れば贈与税の対象になり、死亡保険金を受け取れば相続税の対象になります。仮に10年間毎年30万円の保険料を払っており、満期時に300万円の保険金が子供に支給されたなら、300万円の贈与があったものとして、19万円の贈与税が発生します。

では、どうすればいい?

 まとめると、生前贈与をするなら、通帳・印鑑・キャッシュカードは贈与する相手方に自分できちんと管理をさせましょう。調査官から疑いの目を向けられないようにするためには、実際に使っている記録を残しておくことが最も有力です。贈与でもらったお金は貯めるのではなく、積極的に使っていくことをオススメします。

(本原稿は『ぶっちゃけ相続【増補改訂版】』を一部抜粋したものです)